投稿日:2025.11.21
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販売費及び一般管理費とは?内訳や分析方法、削減方法を解説

「販売費及び一般管理費」は、企業の経営効率や利益に直結する費用です。経営層は項目の意味や内訳を正確に理解し、損益計算書における位置付けや費用構造を把握した上で、適切な管理と分析を行う必要があります。

そこで本記事では、販売費及び一般管理費の定義や内訳、損益計算書での位置付け、分析手法、さらには具体的な削減施策について、わかりやすく解説します。

販売費及び一般管理費とは、販売活動および一般管理業務にかかる間接費用の総称

販売費及び一般管理費(販管費)とは、企業が商品やサービスを販売するための活動や、経理・人事・総務などの管理業務にかかる費用で、売上原価を除いた営業活動に関する費用を指します。英語では「Selling, General and Administrative Expenses(SG&A)」と表記され、IFRS(国際財務報告基準)においても重要な費用です。

また、販売費及び一般管理費はM&Aや企業価値評価にも密接に関わる指標であり、収益構造を示す財務情報の一部として投資家や買収先企業に注目されます。
したがって、販売費及び一般管理費の水準や構成を適切に管理することは、企業価値向上の観点からも重要です。

※IFRSについては下記をご参照ください。
IFRSとは?日本会計基準との違いや導入のメリット・注意点を解説

販売費とは、商品やサービスを販売するために直接かかる費用

販売費とは、商品やサービスを販売するために直接かかる費用です。広告宣伝費、販売員の人件費、販売促進費、営業交通費、運送費などが該当します。
販売費は売上に直結する活動に関わるため、販売効率やプロモーションの費用対効果を把握する上で重要な費用となります。

一般管理費とは、企業全体の運営や間接部門の活動にかかる費用

一般管理費は、企業全体の運営や間接部門の活動にかかる費用を指します。経理・人事・総務部門の人件費、事務所の賃料、通信費、消耗品費などが対象です。
また、役員報酬なども企業のガバナンスに寄与するものであれば一般管理費に属します。
直接的に売上を生み出さない費用ですが、組織運営の安定性やガバナンスに関わるコストとされます。

販売費と一般管理費が分けられている理由

販売費と一般管理費は、費用の性質と管理方法が根本的に異なるため、区別して把握することが重要です。損益計算書上では合計された「販売費及び一般管理費」として表示されますが、経営管理の観点では明確に分けて管理したほうがいいでしょう。

販売費は広告宣伝費や販売促進費など、売上との連動性が比較的高く、戦略的に増減をコントロールしやすい傾向があります。一方、一般管理費は人件費やオフィス賃料のように固定的な性格を持つ費用が多く、企業規模や組織構造に応じて一定水準で発生するため、短期的に削減・調整するのは容易ではありません。

このように性質の異なる費用を分けて管理することで、費用対効果の分析や部門別の予算管理がより正確になり、経営判断の質も向上するのです。

販売費及び一般管理費の具体的な内訳

販売費及び一般管理費の勘定科目の具体的内容は企業が自社の実態に合わせて設定し、財務書類に適切に表示する形が一般的です。企業の事業内容や規模により、どの費用を重視するかが変わるため、実務に即した分類が求められます。

販売費に含まれる主な勘定科目

販売費は商品やサービスを販売するために直接必要となる費用で構成されます。

■ 販売費に含まれる主な勘定科目

勘定科目 内容
広告宣伝費 テレビ・新聞・雑誌広告費、Web広告費、カタログ制作費など
販売手数料 代理店手数料、販売代理店への支払手数料など
運搬費 商品配送費、物流費、倉庫費など
販売員給与 営業部門の給与、賞与、退職給付費用など
旅費交通費 営業活動に関する出張費、交通費など
荷造包装費 商品の梱包材料費、包装作業費など

一般管理費に含まれる主な勘定科目

一般管理費は企業の管理運営全般に必要な費用が含まれます。

■ 一般管理費に含まれる主な勘定科目

勘定科目 内容
役員報酬 取締役、監査役などの報酬※1
給料手当 管理部門(総務、経理、人事等)の給与
法定福利費 社会保険料、労働保険料の会社負担分
福利厚生費 健康診断費、慰安費、社員食堂運営費など
賃借料 オフィス家賃、リース料、駐車場代など※2
減価償却費 オフィスの建物、器具・備品やソフトウェアなどの減価償却費用
水道光熱費 電気代、ガス代、水道代など※2
通信費 電話料金、インターネット料金、郵送料など
租税公課 固定資産税、印紙税、事業税など
支払手数料 銀行手数料、専門家報酬、システム利用料など
保険料 火災保険、賠償責任保険などの保険料
消耗品費 事務用品、PC関連消耗品などの購入費用

※1 ガバナンスに寄与するもの
※2 管理部門使用分

人件費の分類における注意点

製造業では、工場で直接製品の製造に携わる従業員の賃金は「製造原価」として処理され、事務部門で間接業務に従事する従業員の給与は「一般管理費」に分類されます。この区分により、製品の真の製造コストを正確に把握できます。

また、複数部門にまたがる業務を行う従業員については、業務時間の配分に応じて按分計算を行い、適切な費目に配賦することが重要です。この配賦基準を明文化し、継続的に適用することで、期間比較や部門別収益分析の信頼性が向上します。

具体的には、次の基準で分類することが一般的です。

■ 業務内容による詳細な分類基準

計上の区分 内訳
販売費 営業部門、販売促進部門、マーケティング部門の人件費
一般管理費 経理、総務、人事、法務、経営企画部門の人件費
製造原価 工場の製造ライン作業員、品質管理部門の人件費

※製造原価については下記をご参照ください。
製造原価とは?原価の具体的な分類や計算方法を解説

販売費及び一般管理費とOPEXとの位置づけ

販売費及び一般管理費は、OPEX(事業運営費)に分類される費用です。OPEXとは、企業が日常的に事業を運営するために発生する継続的な支出のことを指し、経営管理の観点ではOPEXとCAPEX(資本的支出)を区別することが重要です。

販売費及び一般管理費はOPEXの中でも、広告費や管理部門の人件費、オフィスの維持費など、毎月発生する定常的な費用であり、運営コストとして管理されます。
そのため、販売費及び一般管理費の最適化はOPEX全体の削減に直結し、企業の収益性改善に大きく貢献します。

販管費の構成や変動を正確に把握し、必要に応じて見直しや効率化を図ることは、持続可能な経営のカギとなるでしょう。

■ CAPEXとOPEXの分類図

CAPEXとOPEXの主な支出例の図解

※CAPEX、OPEXについては下記をご参照ください。
CAPEXとは?OPEXとの違いや経営を行う上で重要な理由、投資時の注意点

損益計算書における販売費及び一般管理費の記載方法

損益計算書の図解

損益計算書において販売費及び一般管理費は必ず区分表示される科目であり、通常は「売上総利益」の直下に記載されるのが一般的です。販売費及び一般管理費は「営業利益」を算出するための重要な構成要素となります。

一方、IFRSでは「販売費及び一般管理費」という表示区分は義務付けられていませんが、費用を機能別(販売費・管理費など)や性質別(人件費・減価償却費など)に分類して表示する方式を選択できるため、企業が自社の業種特性や利用者ニーズに応じて適切な区分を開示することになります。

表示方法や開示レベルを決める際には、会社の規模や業種特性、そしてステークホルダーの情報ニーズを総合的に考慮することが重要です。

※損益計算書については下記をご参照ください。
財務諸表とは?作成する目的や財務三表、分析視点について解説

販売費・一般管理費比率を用いた財務分析の方法

販売費及び一般管理費の効率性を客観的に評価するには、売上高に対する比率での分析が有効です。この比率分析により、経営効率の現状把握と改善課題の特定が可能となります。

販売費比率は、企業の営業活動効率性を測る重要な経営指標です。比率が適正水準を維持できれば、売上成長に伴う利益拡大が期待でき、反対に比率が悪化すれば収益性の低下要因となります。

ただし、販売費は企業の戦略方針によっても増減するということを理解しておきましょう。例えば、シェアを獲得するために一時的に広告宣伝費をかける、ということも経営戦略上あり得ます。そのような側面も踏まえて適正水準を見極めることが重要です。

各種比率の計算式・例(販売費・一般管理費・販管費)

販売費と一般管理費を分けて見ることもありますが、実務では両者を合算した「販売管理費比率(販管費率)」がよく用いられます。
それぞれの基本的な算出方法は下記のとおりです。

<販売費比率の計算式>
販売費比率=販売費÷売上高×100

<一般管理費比率の計算式>
一般管理費比率=一般管理費÷売上高×100

<販売管理費比率の計算式>
販売管理費比率=販売費及び一般管理費÷売上高×100

続いて、製造業のA社(従業員数150名)の年間実績データを例に、実際の計算プロセスを見てみましょう。

<A社の年間実績データ>
売上高:12,000万円
販売費:960万円(広告宣伝費400万円、営業人件費560万円)
一般管理費:1,440万円(管理部門人件費800万円、賃借料300万円、その他340万円)

<各種比率の計算例(販売費・一般管理費・販管費)>
販売費比率=960万円÷12,000万円×100=8.0%
一般管理費比率=1,440万円÷12,000万円×100=12.0%
販売管理費比率=2,400万円÷12,000万円×100=20.0%

製造業全体の販売管理費比率はおおよそ15〜20%程度とされ、A社の20.0%は平均の上限付近に位置しています。

特に注目すべきは販売費比率8.0%の内訳です。広告宣伝費が400万円(売上高比3.3%)、営業人件費が560万円(同4.7%)となっており、営業人件費の割合が高めです。これは営業効率に改善余地がある可能性を示唆しています。
一方、一般管理費比率12.0%については、管理部門人件費が800万円と全体の約67%を占めており、これは適正な水準といえますが、賃借料が300万円(売上高比2.5%)となっているため、オフィス効率化の検討余地があるかもしれません。
ただし、上記のとおり、シェアの獲得のため一時的に営業部門に人件費をかけている場合もあるでしょう。

このような詳細分析により、単純に「20%は高い」と判断するのではなく、改善すべき具体的な領域を特定できるのです。

販売管理費比率の分析のポイント

経営効率の向上を実現するには、販売管理費比率を多角的に分析し、改善の方向性を明確にすることが重要です。
ここでは、販売管理費比率を分析する際のポイントを紹介します。

<販売管理費比率の分析のポイント>

時系列で比較する

自社の過去データとの比較により、経営効率の変化傾向を把握します。この分析により、改善の成果や新たな課題を客観的に評価できます。

<分析のポイント>

  • 月次・四半期・年次での推移をトレンド分析

    季節要因や一時的要因の影響を除外した基調判断

    3~5年の中長期データによる構造変化の把握

    売上成長率と販管費増加率の関係性分析

例えば、売上が10%成長した際に販売管理費が15%増加した場合、意図していない増加であれば効率性の悪化を示しており、原因究明と対策が必要です。

同業他社や業界平均で比較する

競合他社や業界平均との比較により、自社の競争力と改善余地を客観的に評価します。業界特性を考慮した分析により、現実的な目標設定が可能となります。
同業他社との比較においては、事業規模、事業領域、成長ステージの違いを考慮し、類似性の高い企業を選定することが重要です。

■ 業界別の一般的な販売管理費比率

業界 販売管理費比率の基準
小売業 15~25%
製造業 10~20%
サービス業 20~30%
IT・ソフトウェア業 25~35%

費用対効果で比較する

販売管理費の投資効率を定量的に評価し、売上や利益への貢献度を測定します。費用対効果の測定により、効果的な投資領域と削減対象領域を明確に区分できます。
単純な費用削減ではなく、投資効果の最大化を目指す視点が重要です。

■ 効果測定の具体例

費用 内訳
広告宣伝費の効果測定 広告費1万円当たりの新規顧客獲得数、売上増加額
営業人件費の効果測定 営業員1人当たりの売上高、受注件数、顧客訪問効率
システム投資の効果測定 業務効率化による時間短縮効果、人件費削減効果

※単位は企業の規模などによって異なる

費用内訳を項目別で比較する

販売管理費を構成する各費目の動向を個別に分析し、増減要因を詳細に把握します。この分析により、具体的な改善策を策定することが可能です。
各項目の売上高比率を継続的に監視し、異常値が発生した場合は速やかに原因分析と対策を実施することが重要です。

■ 項目別の主な分析内容

費用 分析内容
人件費 生産性向上余地、適正人員配置、スキル向上効果
広告宣伝費 媒体別効果、ターゲティング精度、ブランド認知度向上効果
賃借料・水道光熱費 オフィス効率性、テレワーク活用可能性
外部委託費 内製化可能性、委託先変更効果

売上構造やイベント時期で比較する

新商品投入やキャンペーン時の特別費用と通常期の販売管理費比率を比較し、一時的な変動を把握します。
期間限定のプロモーションや展示会出展など、計画的な投資による一時的な費用増加と、構造的な問題による費用増加を明確に区別することが重要です。

■ 考慮すべき特殊要因

要因 変動する費用
新商品・新サービス投入 初期投資費用、マーケティング強化費用
季節・キャンペーン 繁忙期の臨時人員費用、特別販促費
システム更新・オフィス移転 一時的な重複費用、初期設定費用
M&A・事業再編 統合費用、重複部門の整理費用

販売費及び一般管理費を削減する効果的な方法

販売費及び一般管理費の削減は、短期的な利益改善と長期的な競争力強化の両面で重要な経営課題です。ただし、単純な削減により事業基盤を毀損することがないよう、戦略的なアプローチが求められます。
ここでは、販売費及び一般管理費を削減する効果的な方法を解説します。

<販売費及び一般管理費を削減する方法>

役員報酬の適正化

役員報酬は販売費及び一般管理費の中でも大きな割合を占め、中小企業では全体の10~20%を占めるケースもあるため、適正化により即効性のある削減効果が期待できます。
まずは同業他社や同規模企業との比較により客観的な市場水準を把握し、業績連動報酬制度の導入を検討しましょう。

ただし、役員報酬の変更には定時株主総会での承認手続きが必要となります。また、税務上不相当に高額な役員給与と判断されると損金算入が認められないため注意が必要です。特に、定期同額給与や事前確定届出給与といった法人税法の要件を満たさない場合、損金不算入となり、法人税等の負担が増加する要因になるので、変更の際は税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。

人件費の適正化

人件費の適正化は、従業員の働きがいと生産性向上を両立させながら慎重に進める必要がある重要な取り組みです。一般的に販管費の40~60%を人件費が占めるため、効率化の効果は非常に大きい一方、従業員のモチベーションや企業文化への影響も十分に考慮しなければなりません。

効果的なアプローチとして、RPAやAIを活用した定型業務の自動化、テレワークやフレックス制度による生産性向上が挙げられます。
さらに従業員のスキルアップ支援により1人当たりの生産性を向上させることで、人員増加なしに業務拡大に対応できます。

なお、実施時は変更の目的と効果を丁寧に説明し、従業員の理解と協力を得ることが成功のカギとなるでしょう。

固定費の見直し

固定費は一度削減効果を実現すると継続的な利益改善に寄与するため、最優先で取り組むべき領域です。
オフィス関連費用では、テレワーク普及によりフロア集約や小規模オフィスへの移転で賃料を大幅削減できる可能性があります。エネルギーコストは省エネ設備への投資や電力会社の見直し、通信・IT関連費用は一括契約やクラウドサービス活用が効果的です。

ただし、過度な削減により事業継続に支障をきたさないよう、将来の事業拡大時の柔軟性も考慮した検討が重要になります。

広告費や販促費の費用対効果の最適化

広告宣伝費や販売促進費は売上拡大に直結するため、単純な削減より投資効率の向上が重要です。
顧客データ分析により関心の高い層を特定し、集中投資することで費用対効果を大幅改善できます。Web広告やSNS広告は効果測定が容易でリアルタイム最適化が可能なため、従来の媒体からの移行が効果的です。
ROIやCPAなどの指標で継続的に効果測定し、効果の高い施策への集中と低効果施策の廃止を迅速に実行することが成功のカギとなります。

旅費交通費の見直しと効率化

新型コロナウイルス感染拡大以降のオンライン会議の普及により、旅費交通費は大幅削減が可能な領域となっています。定例会議や進捗報告をオンラインで実施することで出張費を削減でき、移動時間短縮による生産性向上効果も期待できます。

出張が必要な場合も早期予約割引や法人契約の活用、出張計画の効率化によりコスト削減が可能です。ICカード法人契約やETCカード活用など日常交通費の工夫、旅費規程の作成や見直しなども重要で、削減効果と営業効率のバランスを保ちながら最適な水準を見極めることが必要です。

販売費及び一般管理費の最適化で企業の競争力を高めよう

販売費及び一般管理費の適切な管理は、企業の持続的成長と競争力強化の基盤となります。重要なのは、単純な費用削減ではなく、将来の成長投資とのバランスを保ちながら、戦略的にコスト管理を行うことです。

これらの取り組みを継続的に実施し、その効果を定量的に測定・評価するためには、会計システムや経営管理ツールの活用が不可欠です。正確なデータに基づく意思決定により、より精度の高い経営管理が実現できるでしょう。

株式会社アバントでは日本を代表する数々のお客様へのプロダクト導入・コンサルティングの支援実績がございます。経営管理についてのお困りごと、ご相談も幅広く承りますのでお気軽にお問い合わせください。

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