投稿日:2026.02.16
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サステナビリティ経営の最新トレンド【第2回】Scope3算定の基礎知識と企業が取り組むべき開示戦略

サステナビリティ経営の最新トレンドを3回シリーズで解説しています。

第1回「ESG開示義務化で変わる投資・市場の企業評価基準」では、サステナビリティ情報の法規制動向や、投資・市場からの脱炭素圧力について見てきました。環境データの整備と開示が、もはや企業競争力の前提条件となっている現状を確認しました。

今回は、企業が実際に算定・開示すべきGHG排出量の全体像を解説します。「Scope1・2・3」という3つの分類や、企業全体と製品単位という2つの開示視点について、実務的な観点から整理していきます。

Scope1・2・3とは?可視化すべきGHG排出量の全体像

企業のGHG排出量を正確に把握するには、国際的に標準化された「Scope(スコープ)」という分類方法を理解する必要があります。

この分類は、GHGプロトコルによって定められた世界共通の基準です。排出源と自社の事業活動との関係性に基づき、Scope1、Scope2、Scope3の3つに区分されます。この分類により、企業は事業の影響が及ぶ範囲を明確にし、サプライチェーンにおける排出量を体系的に管理できるようになります。

Scope1|直接排出

自社が所有または管理する施設から直接大気中に排出されるGHGです。主な排出源は以下の通りです。

・工場・事業所でのボイラー、焼却炉、自家発電設備などでの燃焼
・製造プロセスからの排出
・社用車・輸送車両の燃料使用
・エアコン、冷凍・冷蔵設備からフロンガスなどの漏洩

これらは自社でコントロール可能な排出源であり、省エネ設備への更新や燃料転換といった直接的な削減対策を実施できます。

Scope2|間接排出

他社から供給されたエネルギーの使用に伴う間接排出です。
・購入電力の使用(電力会社の発電時に排出されるGHG)
・購入した蒸気・熱・冷水の使用(地域冷暖房システムなど)

日本では、電力のCO2排出係数が電力会社や契約プランによって異なります。そのため、再生可能エネルギー由来の電力への切り替えがScope2削減の重要な手段となります。

Scope3|その他の間接排出

Scope1・2以外の間接排出で、15のカテゴリに分類されます。自社のサプライチェーン全体(上流・下流)に関わる排出です。

<上流カテゴリの例>
・カテゴリ1(購入製品・サービス):原材料の製造時の排出量
・カテゴリ4(輸送・配送):原材料の輸送時の排出量

<下流カテゴリの例>
・カテゴリ9(輸送・配送):製品の配送時の排出量
・カテゴリ11(販売製品の使用):顧客が製品を使用する際の排出量
・カテゴリ12(販売製品の廃棄):製品廃棄時の排出量

このほか、カテゴリ5(廃棄物)、カテゴリ6(出張)、カテゴリ7(通勤)など、事業活動に関連する様々な間接排出も含まれます。

Scope3算定の難しさ

多くの企業活動において、Scope3は全体の7〜9割を占める一方で、その算定には大きな課題があります。自社でコントロールできない領域が多く、サプライヤーからのデータ収集、顧客の使用状況の把握、複雑なサプライチェーンの追跡など、膨大な労力と他社との協力が欠かせません。しかも、正確性を担保するのが困難な情報が多く含まれます。

それでも投資家や取引先は、Scope3を含めたGHG排出量の開示と削減を強く求めるでしょう。サプライチェーン全体での協働なくして、真の脱炭素は実現できないのです。

企業全体か製品単位か──GHG排出量開示の2つの視点

企業活動におけるGHG排出量の開示は、その目的と対象によって以下の2つに大別されます。

製品・サービス単位の排出量(CFP)

自社製品のGHG排出量データを取引先に提供するため、主に事業部門が算出する役割を担います。顧客から製品1個あたりのCO2排出量を問われた際に、速やかにデータを提示できる準備が求められ、これによって取引先との信頼構築や競争力強化を図ります。

企業全体の排出量

企業全体のGHG排出量については、サステナビリティ部門が算出する役割を担い、市場や投資家に開示します。有価証券報告書やサステナビリティレポートで開示される、企業全体のScope1・2・3排出量がこれに該当します。

投資家や市場への説明責任を果たし、企業価値の向上につなげる取り組みです。

製品ごとのCFPデータを合計し企業全体の排出量を計算する一方で、企業全体で設定した削減目標を各製品に落とし込んだうえで実現を目指すなど、両者には密接な関係があります。重要なのは、それぞれの視点に応じたデータ整備・開示体制を構築することです。事業部門とサステナビリティ部門の連携強化、データ収集・管理システムの統合、業務フローの再設計などが成功の鍵となります。

複雑なCFP算定を支える、業界別ガイドラインの活用

製品単位のCFP(カーボンフットプリント)、すなわち製品ライフサイクル全体におけるGHG排出量の算定には、細かな作業と専門知識を要します。

原材料別のGHG排出量を把握し、製造工程での電力使用量を製品ごとに配分し、輸送距離に応じた排出量を計算する作業は、複雑なプロセスと言わざるを得ません。

このような課題に対応するため、経済産業省はCFP算定の基本的な手順を示すガイドラインを策定しました。

Step 内容
Step1 算定方針の検討(目的や用途を明確にする)
Step2 算定対象製品のライフサイクルを規定する
Step3 各プロセスのGHG排出量(および除去・吸収量)を計算し、合計する
Step4 CFPが適切に算定されているかを確認する

このガイドラインで基本的な方針は示されていますが、実際の算定作業に適用するには各業界の特性を考慮する必要があります。

そこで各業界団体は、経済産業省のガイドラインをベースに、より詳細な独自ガイドラインを整備しました。たとえば日本化学工業協会は、「化学産業における製品のカーボンフットプリント算定ガイドライン」を発行し、化学製品特有の算定方法を具体的に示しています。

このような複雑なCFP算定業務には、業界団体との連携やガイドラインの活用が欠かせません。自社だけですべてを解決しようとするのではなく、業界標準に準拠しながら効率的に進めることが成功への近道です。

まとめ

GHG排出量の可視化では、自社で直接コントロールできるScope1・2だけでなく、サプライチェーン全体を含むScope3の算定・開示が不可欠です。Scope3は算定が困難であるにもかかわらず、投資家や取引先から強く開示を求められています。

また企業は、全社レベルのGHG排出量開示と製品単位のCFP開示という2つの視点を持ち、それぞれの目的に応じた体制を構築する必要があります。

次回は、企業がGHG排出量算定・開示に使用するデータをいかに正確に収集・管理するかについて解説します。GHG排出量算定の基礎となる1次データと2次データの戦略的な使い分けや、限られたリソースで効果的に進める実務対応のポイントを、具体的な事例を交えながら詳しくお伝えします。
サステナビリティ経営の最新トレンド【第3回】Scope3対応の戦略設計と1次データ活用の実践ステップ

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