投稿日:2024.04.09
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予実管理とは?行う目的やサイクル、効果的に行うポイントを解説

予実管理とは、予算と実績を管理する管理会計業務の一つです。予実管理を適切に行うことで、予算と実績を比較して実態を分析し、企業が経営目標を達成するために順調に進んでいるかを把握できます。

経営管理とも深く関わる予実管理を適切に行うためには、どのようなステップで行えばいいのでしょうか。本記事では、予実管理の意味や効果、似た用語との違い、効果的に行うためのポイントなどを解説します。

※管理会計については、こちらのコラムをご参照ください。
>>管理会計とは?メリットや財務会計との違いについて解説

1)予実管理とは、予算と実績を管理すること

予実管理は管理会計業務の一つで、「予算実績管理」とも呼ばれます。
企業が経営目標を達成するためには、予算と実績を比較して分析し、実態を把握しなければなりません。経営目標を立てただけで途中経過を確認しなければ、目標達成に向けて順調に経営が進んでいるのか、改善が必要なのかを判断できないためです。

予実管理を適切に行うことで、予算に対してどの程度の実績が生まれているのかを分析でき、企業の状況を把握できるようになります。予算に見合う実績が出ていない場合は、課題を明らかにした上で具体的な対策を講じることもできるようになるでしょう。
また、経営目標に対して良い実績を得られている場合も、その理由を分析して今後の経営に活かせるようになります。

・予算は企業の数値目標
企業経営における予算とは、会社の経営ビジョンに基づく数値目標です。
一般的には、経営に必要な物品を購入するための予算のような費用(コスト)面で使われる言葉ですが、実際に「会社の予算」に含まれるのは費用だけではありません。売上や利益に関する目標も含まれるのです。
通常、企業では新年度が始まる前に収入と支出の見積もりを出します。予算とはこの見積もりのことで、主に売上予算・利益予算・経費予算・原価予算の4つに分けられます。

《売上予算》
売上予算は、商品やサービスの売上目標です。一般的には、これまでの売上実績を基に算出し、過去実績に売上を加えた数値を設定します。市場動向などにも影響を受けるため、売上予算は定期的な見直しや調整が必要です。

《利益予算》
利益予算は、企業が達成すべき利益の目標で、売上から原価と経費を差し引いた数値予算を指します。売上の目標が達成できなかった場合でも、原価や経費を押さえて利益率を高めることで、利益予算を達成することができます。

《経費予算》
経費予算は、人件費や販売費など、企業活動を行う上で必要なコストの見積もりです。市場動向などの影響を受けにくく、予算と実績の比較をしやすいという特徴があります。

《原価予算》
原価予算は、商品やサービスを作るために必要な原価の見積もりです。具体的には、原材料費や商品仕入れなどがあります。売上の変動によって材料などの調達や製造数も変わるため、定期的な見直しと調整が必要です。

・予算管理との違い
予実管理と似た用語に「予算管理」があります。これらは同義に使われることもありますが、目的や役割が異なるため、違いを確認しておきましょう。

まず、予算管理は、策定した収益や支出の計画に基づいて、リソースの配分や活用について計画・目標を立てるプロセスです。計画は会計年度や予算期間の初めに設定します。予算管理の目的は、経営の効率最大化です。
一方、予実管理は、予算(計画)と実際の業績(実績)を比較することでその差を明確にし、生まれた差について原因を分析するマネジメント手法を指します。予実管理の目的は、目標達成度合いの把握と分析、課題解決のためのサポートです。

また、予算管理と予実管理では、分析サイクルも異なります。
予算管理は1年ごと、または半期、四半期ごとに実施されますが、予実管理は1週間ごとや1カ月ごとなど短い管理サイクルで予算と実績を比較・分析をすることが多いです。

2)予実管理の目的と効果

予実管理の目的は、企業の経営状態を「見える化」することです。
計画と実績を比較し、目標に対する進捗状況や達成度を可視化できます。立てた予算に対して、計画どおりの実績が出ているかを管理することによって、順調に進行していない場合はその要因や課題を見つけ、改善策を講じることができるのです。

例えば、ある部門が予算オーバーして赤字となっている場合は、予実管理でその内訳を確認することで、「売上は出ているものの、コストが大きい」「売上自体が低迷している」などの赤字の原因を把握することができます。予実管理によって課題を明確化できれば、目標達成に向けた軌道修正もできるようになるでしょう。
予実管理を適切に行うことは、企業の目標達成率を高めることや、安定的な経営のための迅速な判断に役立てられるのです。

3)予実管理のプロセス

ここからは、予実管理を行う具体的なプロセスを見ていきましょう。予実管理は、次の3つのステップで行います。

1. 予算目標を立て、予算を設定する
まず行うのは、会社全体の予算目標を設定することです。全体目標を立てた上で、各部門やプロジェクトごとの予算目標へと落とし込みます。
予算目標は、適切な数値であることが必要です。そのため、過去の実績も踏まえて検討し、自社や業界の成長率、トレンドなども確認して将来の見通しを分析し、無理のない目標となっているか確認しましょう。

2. 予算と実績を比較し、分析する
目標に向けて事業活動を行ううちに、予算と実績には必ず差異が出てくるものです。この乖離を迅速かつ正確に把握するために、予実管理システムなどを活用して予算と実績を比較し、現状を可視化する必要があります。

予算と実績の比較は、週次または月次で実施。予算と実績に乖離があれば、なぜ乖離が生まれたのか原因や課題を分析します。
差異分析の際は、売上額ではなく販売費と一般管理費を差し引いた「営業利益」に着目することがポイント。原価に関わらないコストが多額になっている場合、売上額が多くても赤字となる可能性があるためです。
なお、実績や予算との差異は、できるだけ多くの従業員と共有しましょう。設定した予算に対する実績や進捗を可視化し、社内全体で努力目標を持つことも大切です。

3. 課題への対策を検討、実行する
予算と実績の差異分析を行ったら、発見した課題に対する具体的な改善策を検討し、実行します。課題への対策は、優先順位をつけて実行に移すことが大切です。
また、計画・実行・評価・改善(PDCAサイクル)を繰り返すことで、早期での課題解決につながり、予算目標に近づくことができます。

4)予実管理を効果的に行うポイント

予実管理を行う際には、どのような点に注意するとよいのでしょうか。ここでは、予実管理を効果的に行うための6つのポイントをご紹介します。

・適切な予算設定を行う
まず大切なのは、適切な予算設定です。最初に立てる予算目標は、高過ぎず低過ぎず、適切な数値を設定しなければなりません。前述の通り、過去の実績を踏まえるとともに、自社・業界の成長性、トレンドなど将来の見通しを分析して設定することが大切です。

予算目標が高過ぎると、従業員に過度な負担がかかる可能性があります。反対に、目標が低過ぎる場合は、努力しなくても達成できるという意識が生まれやすくなり、従業員の意欲が低下してしまうおそれがあるのです。

予算目標は、簡単には達成できないものの、努力することで達成できる数値に設定することがポイント。従業員のモチベーションが向上し能力も十分に発揮される目標を立てることで、適切な予実管理もしやすくなり、企業全体の成長を促すことにもつながるでしょう。

・部門ごとにKPIを設定する
予実管理がしやすくなるように、部門ごとに明確なKPI(Key Performance Indicator)を設定することもポイントです。
KPIは、企業の目標達成のために行うプロセスにおいて、達成度を評価する指標を指します。部門ごとにKPIを設定することで、予算に対する実績の差異の分析や改善策の検討がしやすくなるためです。

例えば、営業部門の場合は、KPIとして具体的な受注件数や訪問件数の目標を設定します。予算だけでなく、経営目標を達成するために必要な具体的な業務に関するKPIも設定することで、より効果的な予実管理ができるようになります。

・定期的に実行する
予実管理は定期的に行い、予算と実績の比較に間隔が空き過ぎないようにすることもポイントの一つ。実績を定期的に把握することで、業績の進捗状況をリアルタイムで可視化できるようになり、必要な対策を迅速に判断できるようになるためです。
予算と実績の乖離を早期発見できれば、問題が拡大する前に適切な対策を講じることができます。従って、予実管理はできれば週次、少なくとも月次で実行できる体制を整える必要があるでしょう。

なお、定期的な予実管理を行うことは、部門間やチーム間のコミュニケーション強化にもつながります。企業全体の連携も向上し、より効果的な経営活動の実現が期待できるのです。また、予実管理によって定期的なチェックと改善のサイクルを繰り返せば、企業全体で継続的に事業を改善していく体制が生まれ、組織の持続的な成長を支える基盤を構築することができます。

・細かい差異にこだわり過ぎない
予実管理では、細かい差異にこだわり過ぎないように注意してください。なぜなら、現状を把握して経営改善に向けた対策を分析・実行するという予実管理の本来の目的を見失ってしまうためです。
予算と実績の差異の分析は、あくまで改善策実行に向けた手段でしかありません。予算と実績の比較や差異の分析にばかりリソースを割き、それが目的になってしまわないようにしましょう。

・必要に応じて予算修正を検討する
最初に立てた予算にこだわり過ぎないことも重要です。予算にこだわり過ぎると、目標達成のために無理をしなければならない状況に陥る可能性もあります。予算と実績の乖離が大きい場合は、必要に応じて柔軟に予算修正を検討してください。

予算と実績が合わない場合は、そもそも最初に設定した予算が現実的ではなかった可能性もあります。「取引状況が急変した」「競合が登場した」といったことが要因で、予算を立てた時点とは状況が変化し、予算と実績に大きな差異が生まれるケースもあるものです。状況の変化によって、将来の見通しや着地見込みが変わるケースもあります。状況や見通しの変化によっては、予算の見直しを求められることも踏まえて予実管理を行いましょう。

・予実管理システムを活用する
予実管理は、Excelなどの表計算ソフトで行うこともできますが、それだけでは入力や処理に手間がかかり、人為的な入力ミスが起こる可能性もあります。
そのため、予実管理を効率良く、正確に行うためには、予実管理システムの導入が有効です。

予実管理システムとは、予算の編成から実績との差異分析、業績の予測までの予算に関わる一連の業務をサポートするツールやサービスです。予算と実績の差異をグラフや図表などで出力でき、業績をリアルタイムで把握・分析できる機能を備えたものもあります。また、会計システムと連携できる予実管理システムなら、データの入力や収集も自動でできるため、業務負担も大きく軽減できるでしょう。

Excelだけで管理する場合と比較しても、入力や処理にかかるリソースの削減が期待できます。

5)予実管理はシステムを導入・活用することでより効率的に実行できる

予実管理は、企業が経営目標を達成するための進捗を可視化し、目標達成や企業の成長につなげていくために必要不可欠です。定期的に効果的な予実管理を実行できれば、目標達成を実現するための適切な対策を講じることができるようになります。

適切な予実管理を行うためには、設定した予算に対して実績がどの程度生まれているのかをリアルタイムで把握することが必要です。加えて業績予測や将来の見通しを踏まえた数値設定や調整が大切になります。予実管理を効率良く行うためにも、高度な分析や予測 の サポートをしてくれる予実管理システムの導入を検討することをおすすめします。

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