最終更新日:2025.07.10
経営ダッシュボードとは?作り方やメリット、活用の注意点を解説

売上や財務、人事など、企業内には多種多様なデータが存在し、それらを瞬時に把握することは容易ではありません。そこで注目されているのが、経営判断に必要な情報を一元化し、可視化する「経営ダッシュボード」です。
この記事では、企業の情報管理に関する課題を解決する経営ダッシュボードの作り方や活用時の注意点、導入するメリットについて解説します。
経営ダッシュボードとは、経営判断に必要な情報を可視化するツール
経営ダッシュボードは、売上や生産管理、仕入れなど、経営に関わるあらゆる情報を一つの画面に集約し、リアルタイムで可視化するツールです。複数の部門やシステムから取得したデータを整理・統合し、グラフやチャートで直感的に表示することで、経営状況を即座に把握できるようになります。
近年では、意思決定の迅速化や情報の透明性向上を目的として、国内外の企業で広く導入が進んでおり、特に海外では標準的な経営支援ツールとして定着しています。経営ダッシュボードを導入することで、経営者やマネジメント層が状況を即時に確認でき、組織全体の判断スピードや戦略実行力の強化にもつながります。
経営ダッシュボードは「情報を見える化」するだけでなく、「組織全体の意思決定スピードを高める強力なツール」として、現代の経営において欠かせない存在となっているのです。
経営ダッシュボードの活用・導入に関する課題解決、ご支援を希望の方は、お気軽にご相談ください。
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経営ダッシュボードの機能
経営ダッシュボードには、経営情報を視覚的かつリアルタイムに把握できる機能が数多く備わっています。下記は、経営ダッシュボードの代表的な機能です。
<経営ダッシュボードの主な機能>
- ・KPI・経営指標の可視化:経営目標の達成状況や重要指標をリアルタイムに一目で把握可能
- ・レポーティング機能:経営会議や報告資料として活用しやすいレポートを出力可能
- ・チャート・グラフ作成機能:多様なデータを視覚化し、直感的な理解を促進
- ・アラート・通知機能:異常値や目標未達など、あらかじめ設定した条件に基づいて自動で通知
- ・ドリルダウン機能:全体数値から詳細データへ掘り下げて分析が可能
これらの機能によって、単なる情報表示にとどまらず、「気づき」「対応」「改善」へとつなげるアクションベースの経営判断が実現します。
経営ダッシュボードの作り方
経営ダッシュボードはどのように作成・導入すればよいのでしょうか。ここからは、経営ダッシュボードの作成方法を、順を追って見ていきましょう。

1. 目的を明確にする
まずは、経営ダッシュボードを、誰が何のために使うのか、はっきりさせることが重要です。目的が曖昧だと、表示すべき指標やレイアウトも定まりません。
「経営層が全体の状況を把握したいのか」「部門長がKPIをモニタリングしたいのか」「現場の担当者が業務進捗を管理したいのか」といったように、利用者の立場を踏まえた上で目的を具体化しましょう。
2. 指標を決定し、データを収集・整理する
目的が明確になったら、次は経営ダッシュボード上に、どの指標を見える化するか決定します。経営判断が目的の場合は「売上・人件費・財務などの全社的な指標」、現場業務が中心の場合は「作業進捗や在庫など、実務に即した指標」など、目的に沿って適切な指標を決めましょう。
選定した指標に応じて、各部門やシステムから必要なデータを収集し、形式を整えて統合します。ここでの精度が、経営ダッシュボードの信頼性と実用性を左右するのです。
■ 経営ダッシュボードに集約すべき主なデータ
主なデータ | 例 |
売上データ | 日次、週次、月次、年次の売上高、売上高推移、製品別/地域別売上など |
生産管理データ | 生産量、生産ライン稼働状況、不良品率、リードタイム、生産計画の進捗状況など |
人事データ | 従業員数、稼働率、勤怠管理、離職率、採用進捗、人件費など |
財務データ | 損益情報、収益性指標、キャッシュフロー、プロジェクトのリスクコスト、予算実績差異など |
マーケティング・営業データ | サイト訪問者数、チャネル別パフォーマンス、CV率、リード獲得数、営業案件進捗、成約率など |
3. ダッシュボードのレイアウトを決める
せっかく経営ダッシュボードを作成しても、複雑で分かりにくいレイアウトになっていると、情報の把握が困難になります。経営ダッシュボードを作成する際は、ダッシュボードが直感的に分かりやすいレイアウトになっているか注意が必要です。
ダッシュボードのレイアウトは、情報の重要度に応じて配置やサイズを調整します。
重要な指標やデータは、目立つ場所に配置することで、直感的な情報の把握に役立つでしょう。そして、情報の関連性を考慮し、グループ化することも有効です。関連するデータや指標をまとめることで、情報の整理がしやすくなります。
4. 適切な表現方法を選ぶ
ダッシュボードに表示する情報は、内容に応じた最適な表現形式で見せることが重要です。例えば、売上推移を示すなら折れ線グラフ、部門別構成比を示すなら円グラフ、数値比較には棒グラフなど、目的に合ったグラフ形式を選ぶことで、情報の理解度が高まります。
また、配色やレイアウトにも配慮し、見やすく、直感的に把握できるデザインにすることもポイントです。複雑すぎる表現や装飾は避け、シンプルかつ視認性の高い画面設計を心掛けましょう。

経営ダッシュボードを活用する際の注意点
経営ダッシュボードを作成後、どのように活用すれば良いのでしょうか。ここからは、経営ダッシュボードを活用する際の注意点を紹介します。
指標の重要度を明確にする
経営ダッシュボードに多くの情報を詰め込みすぎると、かえって何を見れば良いのか分からなくなってしまいます。意思決定に必要なKPIや注視すべき経営指標に優先順位をつけることで視認性が高まり、迅速な判断が可能になります。
実際には5~9個程度の指標に絞るのが望ましく、あれもこれもと盛り込みすぎないことが、ダッシュボードの活用度を高めるポイントです。
KPIに合わせて改善を行う
経営ダッシュボードは、導入後もKPIに応じて継続的に改善することが重要です。
KPIの内容や重視すべき情報は、経営戦略の変更や事業環境の変化に伴って変わることがあります。従って、定期的にダッシュボードの構成や指標を見直し、必要に応じてカスタマイズすることで、常に現場に合った状態を保つことが可能です。
導入して終わりではなく、改善・検証・再調整のサイクルを回すことで、経営判断の質とスピードがさらに高まるでしょう。
経営ダッシュボードだけで判断しない
経営ダッシュボードは、企業の経営状況を可視化するための重要なツールです。しかし、経営ダッシュボードに表示されている指標は、あくまで判断材料の一部です。
指標はあくまでも数値であり、経営の全てを表すものではありません。
例えば、売上高が上昇しているという指標があっても、その背後には市場の需要変化や競合他社の動向など、さまざまな要素が関与しています。また、利益率が低下しているという指標があっても、原因はコスト増加や為替変動などさまざまな要素による可能性があります。
従って、経営ダッシュボードの指標だけを見て判断するのではなく、それ以外の情報も踏まえて意思決定することが重要です。例えば、市場のトレンドや競合他社の動向など、自社の企業経営に関する情報以外のデータを積極的に収集することで、より正確な判断を行うことができるでしょう。
経営ダッシュボードを作成するメリット
経営ダッシュボードを作成することは、企業の経営管理にさまざまなメリットをもたらします。ここでは、経営ダッシュボードで経営管理を行うメリットを五つご紹介しましょう。

経営状況を直感的に理解できる
経営ダッシュボードには、企業の各部署のデータ(売上、財務、人事データ)などが一元化されて表示されます。経営に関する情報がグラフや表などで可視化されているため、個々のデータを読み込まなくても、経営状況を直感的に理解することが可能です。
例えば、売上データがグラフで表示されることで、営業部門のパフォーマンスやトレンドが一目で分かります。また、財務データが表やグラフ化されることで、企業の収益性や経済状況を理解できるでしょう。
さらに、人事データがダッシュボードに表示されることで、従業員の人数や離職率などの情報を把握することも可能になります。
リアルタイムでKPIを把握できる
経営ダッシュボードを活用することで、KPIの進捗状況をリアルタイムで把握できるようになります。
経営ダッシュボード上で、売上や利益、人件費などのKPIが最新のデータで常に更新されるため、経営者やマネジメント層は瞬時に状況を把握し、的確な意思決定を行うことができます。これにより、異常値や進捗遅れにも素早く対応でき、組織全体の反応速度が向上するでしょう。
例えば、日別の売上グラフや予算達成率がリアルタイムに表示されることで、現場との連携もスムーズに進みます。経営目標に対する進捗確認や修正が迅速に行える点も、経営ダッシュボードの大きな強みです。
スピーディーな意思決定ができる
経営者にとって、時間は限りある貴重な資源です。
経営ダッシュボードがあれば、企業の重要な情報を一目で把握することができ、経営者のスピーディーな意思決定に役立ちます。例えば、売上高や利益、生産性などのデータをリアルタイムで表示することで、経営者は常に経営状況を把握でき、問題や機会を素早く発見して迅速な意思決定を行うことができるでしょう。
情報共有がスムーズになる
経営ダッシュボードでは、企業内の他の部署ともオンラインで同じ情報を共有することが可能です。この機能により、組織内の情報共有とコミュニケーションの効率化が実現します。
例えば、販売部門の管理者は経営ダッシュボードを使用して、売上の推移や顧客の動向を他の部署と共有し、生産部門の管理者とも、生産性や品質のデータを共有します。販売部門と生産部門の管理者が双方のデータにアクセスすることで、現状の課題を共有・認識し、生産から販売まで一貫したプロセスの改善を図ることができるのです。
レポート作成を効率化できる
経営ダッシュボードを活用すれば、経営レポートの作成にかかる手間と時間を大幅に削減できます。
従来は各部門からデータを収集し、手作業でグラフや表を作成する必要がありましたが、経営ダッシュボードなら最新のデータを自動で集計・可視化できるため、効率的なレポート作成が可能です。
また、会議や報告資料にもそのまま活用できるビジュアルが整っており、情報の伝達もスムーズになります。業務負荷の軽減とともに、報告の質とスピードも向上するでしょう。
経営ダッシュボードの導入で意思決定を適切に
スピーディーかつ、適切な意思決定を行うには、情報を一元化でき、UI(ユーザーインターフェース)に優れた経営ダッシュボードの導入が必要です。
株式会社アバントでは、経営意思決定を支援するプロダクト導入やコンサルティングを多数の企業にご提供してきた実績があります。
戦略・シナリオ策定のためのグループ経営ダッシュボード「AVANT Chart」は、制度連結・管理会計データ、その他非財務データを集約化し、将来予測シミュレーションを実現します。より高度な経営分析のためにも、「AVANT Chart」の導入をご検討ください。
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AVANT Chart

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