需要予測とは?手法やモデル、経営活用のポイントを解説
「勘や経験に頼った予測から脱却し、データに基づいた経営判断を実現したい」という課題は、規模・業種を問わず多くの企業が抱えています。そのような課題の解決策として注目されているのが需要予測です。
需要予測とは、過去のデータや市場動向に基づいて将来の需要を見積もる手法であり、経営のあらゆる計画の精度向上につながります。
本記事では、需要予測の主な手法やAI活用の動向、精度を高めるポイント、導入で期待できる効果について解説します。
需要予測とは、過去のデータや市場動向から将来の需要を予測すること
需要予測とは、過去の販売実績や市場動向などのデータに基づき、将来の需要を予測することです。需要を正確に見積もることで、生産・調達・人員・予算といった経営リソースの最適な配分が可能になります。
需要予測は、調達・生産・物流・流通といったサプライチェーン全体の計画(S&OP:Sales and Operations Planning)の起点となるプロセスです。精度の高い需要予測を実現することで、ビジネスのあらゆる局面において合理的な意思決定が可能になります。
※S&OPについては、下記をご参照ください。
注目が高まるS&OPとは?SCMとの違いや導入のポイントを解説
需要予測の目的
需要予測を行うことで、企業はさまざまな経営課題の解決に向けた取り組みを推進できます。
ここでは、需要予測の主な目的を解説します。
<需要予測の主な目的>
在庫・供給管理の最適化
需要予測の主要な目的は、在庫・供給管理の最適化です。過剰在庫による保管コストや廃棄ロス、欠品による機会損失を防ぎ、適切な在庫水準を維持することで、キャッシュフローを改善し、顧客満足度も高められます。
需要変動のパターンを把握し、季節変動や販促キャンペーンの影響も考慮した上で最適な発注数・発注タイミングを設定することが、在庫最適化の基本的なアプローチとなります。
生産計画の効率化
製造業において、需要予測は生産計画の精度を高めるために不可欠です。需要変動を予測して生産量や仕入れ量を調整することで、無駄な資源消費を削減しながらコストの低減とサプライチェーンの安定化を実現できます。
また、生産計画と需要予測を連動させることで、過剰生産による在庫コストの増大や、生産不足による納期遅延を未然に防げます。
ビジネスチャンスの創出
需要予測によって「何が求められているか」「いつ必要とされるか」を事前に把握することで、顧客が必要とするものを継続的に開発・提供し続けられるというメリットがあります。
市場の動向を先読みした製品開発や販売戦略の立案が可能になり、自社サービスの競争力と付加価値を高める機会を創出できるでしょう。タイミングを予測することで、他社に先駆けて市場ニーズに応えられます。
戦略的意思決定の支援
需要予測の結果は、販売促進・価格設定・人員配置などのマーケティング・運用計画をデータ駆動で立案する上での重要な根拠となります。売上や収益の見通しを立てることで、適切な資金配分や投資判断が可能になります。
経営層にとっては、長期的な事業計画や設備投資の意思決定を支える情報基盤として、需要予測の活用が不可欠といえるでしょう。
需要予測の主な手法
需要予測の手法は、大きく「定量的手法」と「定性的手法」に分けられます。それぞれの特徴を理解し、自社の状況に応じて適切な手法を選択することが重要です。
なお、どちらか一方に頼るのではなく、両手法を組み合わせて精度を高めることが一般的です。
定量的手法:データ・数値に基づく予測
定量的手法とは、過去のデータなどの数値を用いて、統計的・数学的に将来の需要を予測する方法です。
客観性が高く、大量のデータを処理する際に有効で、需要の規則性やパターンが明確な商品・サービスに適しています。
■定量的手法の種類
| 手法 | 概要 | 向いているケース |
| 移動平均法 | 直近n期間の平均値を予測値とする | 変動が少なく安定した需要 |
| 指数平滑法 | 直近データに大きな重みをつけて平均する | トレンドのない短期予測 |
| 回帰分析 | 需要に影響する変数(価格・気温など)との関係を数式化する | 外部要因の影響が大きい場合 |
| 時系列分析 | トレンド・季節性・周期性を分解して予測する | 季節変動や長期トレンドがある場合 |
定性的手法:経験・市場調査・意見に基づく予測
定性的手法とは、新商品など過去データがない場合に、担当者の経験や勘、市場調査、専門家の意見などを基に予測する方法です。
定量的手法では対応が難しい市場や新規事業の予測に強みがあります。
■定性的手法の種類
| 手法 | 概要 | 向いているケース |
| デルファイ法 | 複数の専門家に繰り返しアンケートを行い、意見を収束させる | 新技術・新市場の長期予測 |
| 市場調査法 | アンケートやインタビューで顧客の購買意向を直接収集する | 新商品投入前の需要把握 |
| 販売員意見法 | 現場の担当者の見込み・感覚を集約する | 地域・顧客ごとの細かい予測 |
| ライフサイクル分析 | 製品の成長・成熟・衰退のステージから需要を推測する | 製品戦略・長期計画の立案 |
近年増加するAIを活用した需要予測
近年は多品種少ロットによる柔軟な生産体制が求められることも多く、より正確な需要予測の必要性が高まっています。そこで、AIやIoTでの需要予測が活用されるようになりました。
AIの機械学習を活用することで、人間では処理しきれない膨大なデータから複雑なパターンを読み取り、将来の商品やサービスの需要を高精度に予測できます。生産・調達・販売計画の最適化や機会損失の削減に貢献する戦略的ツールとして、多くの企業での導入が進んでいます。
ただし、AIはあくまでも「人間を支援するアドバイザー」として位置付けることが重要です。最終的な意思決定は現場の専門家が行う体制を維持し、AIの予測結果を批判的に評価・活用する姿勢が求められます。
また、IoTのさまざまなリアルタイムデータを大量に収集・活用することで、詳細かつ精度の高い需要予測が実現できます。店舗や地域ごとの顧客動向や設備の稼働状況などのリアルタイムデータを需要予測に組み込むことで、より実態に即した予測が可能になりました。
需要予測の精度を高めるポイント
需要予測の精度を高めることは、経営効率の改善に直結します。
高精度な予測を実現するためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
<需要予測の精度を高めるポイント>
目的と予測対象の明確化
需要予測の精度向上には、まず「何のために予測するのか(生産計画の効率化か、販売戦略の立案か、予算策定の精度向上か)」と「何を予測するのか(SKU単位か、カテゴリ単位か)」を明確に定義することが不可欠です。
目的によって必要な予測精度や予測期間が異なるため、目的の明確化が適切な手法選定の前提となります。
目的が曖昧なまま予測を始めてしまうと、精度検証の基準が定まらず、改善のサイクルも回しにくくなるので気を付けましょう。
データの収集とクレンジング
高精度な需要予測には、社内の実績だけでなく、カレンダー・気象情報・販促キャンペーンなどの外部データも収集・活用することが重要です。
また、欠損値の補完や異常値(突発的な大口受注や災害時データなど)のクレンジングを行い、分析可能な状態にデータを整えることが予測精度の向上につながります。
需要予測において、データの質が予測の質を決めるといっても過言ではありません。
最適なモデルの選定と検証
需要予測では、自社の商材や市場特性に合った予測モデルを選定することが重要です。一つのモデルがすべての商品・状況に適しているわけではないため、複数のモデルを試して比較することが求められます。
過去のデータを使って予測を行い、実績と比較して精度を検証する「バックテスト」を実施し、モデルを継続的にチューニングしていきましょう。
複数手法の組み合わせ
需要予測の際は一つの手法だけに頼るのではなく、統計モデルと機械学習を組み合わせたり、定量予測に定性的な専門家の知見を加えたりすることで、精度を高められます。
例えば、統計モデルで季節変動のベースラインを作り、営業担当者の市場感覚や販促計画を上乗せするというアプローチが効果的です。
予測結果の検証と継続的な改善
需要予測は一度構築して終わりではなく、予測と実績を定期的に比較・評価し、誤差の原因を分析してモデルを継続的に改善するサイクルを回すことが大切です。
AIやツールを活用する場合も「導入して終わり」にせず、試行錯誤を重ねて自社に最適なモデルを育てていく姿勢が求められます。市場環境の変化に合わせてモデルを更新し、予測精度を維持・向上させることが長期的な効果につながります。
需要予測を実施することで期待できる効果
需要予測を体系的に行うことで、企業には以下のような効果が期待できます。
ここでは、需要予測を行うことで期待できる効果を見ていきましょう。
コスト削減とキャッシュフローの改善
需要予測の精度が向上することで、生産・調達・人員配置などの計画精度が高まり、無駄なコストを削減できます。需要予測導入は余剰リソースの発生を抑え、キャッシュフローを改善するのに効果的です。
例えば、製造業であれば過剰生産による廃棄ロスや保管コストの削減、サービス業であれば需要に見合った人員配置の最適化が実現できます。
余剰コストとして失われていた資金を新たな投資や事業拡大に回せるようになり、資本効率の改善にもつながるでしょう。
業務効率化と属人化の解消
ベテラン担当者の「勘と経験」は需要予測において価値ある知見です。ただし、それだけに依存する体制では、担当者の異動・退職によってノウハウが失われるリスクがあります。
需要予測を継続的に行い、データと実績を蓄積することで、勘と経験を組織全体で共有・活用できる体制を構築できます。予測プロセスを標準化することで担当者の工数を削減し、より付加価値の高い分析・戦略立案の業務に集中できるようになるでしょう。
需要予測の精度を高めるには経営管理システムとの併用がおすすめ
需要予測とは、過去のデータや市場動向から将来の需要を見積もり、生産・調達・販売・財務にわたる経営計画全体を最適化するための手法です。定量的・定性的な手法を適切に組み合わせ、AIも活用しながら予測精度を継続的に高めていきましょう。
需要予測を含む経営管理の高度化には、データを一元管理できる適切なツールとの併用がおすすめです。「AVANT Cruise」は、財務・非財務情報の収集・統合から多軸分析まで対応する経営管理クラウドサービスです。1,200社超の支援実績から生み出された90種類の経営会議レポート・分析帳票を標準搭載し、データドリブンな経営の実現を支援します。
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【本記事の監修者】
管理会計ラボ 福原 俊氏
公認会計士
2002年会計士試験合格後、監査法人トーマツにて監査業務に従事。
以降、大正製薬など上場企業3社にて実務経験を積む。経理部長や経営管理室長として組織を率いた経験を活かし、監査の「外部視点」と事業会社の「内部実務」を融合させた現場主導のガバナンス構築を得意とする。
現在は管理会計ラボ(株)講師、SOELU(株)社外監査役として、企業の意思決定と持続的成長を支援している。
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