投稿日:2026.02.09
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SAPの2027年問題とは?ERPサポート終了の対策と移行手順を解説

多くの企業で基幹システムとして利用されているSAP社のERP製品は、既存製品のサポート終了が迫っており、対応に悩まれている担当者の方も多いのではないでしょうか。
特に「2027年問題」は、単なるシステム更新にとどまらず、業務の継続や経営戦略全体に影響を及ぼす可能性があるため、早期の対策が不可欠です。

本記事では、SAPの2027年問題の概要や、企業に与える具体的な影響、サポート終了に向けて取るべき対策、システム移行の標準的な手順について、分かりやすく解説します。

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SAPの2027年問題とは、「SAP ERP 6.0」サポート終了に伴い発生するリスクや課題の相称

SAPの2027年問題とは、世界中の企業で利用されている基幹システム「SAP ERP 6.0」のサポートが2027年末で終了することに伴うリスクや課題の総称です。SAP社は次世代ERP「SAP S/4HANA」への切り替えを戦略的に推進しており、最新製品への移行によって企業のDXを支援する姿勢を明確にしています。

「SAP ERP 6.0」のサポートが終了すると、仕様変更や新機能の追加といったアップデートが停止するだけでなく、セキュリティパッチの提供も行われなくなり、導入している企業への影響は非常に大きいとされています。

「SAP ERP 6.0」のサポート終了はもともと2025年末に期限が設定されていたため、「2025年問題」として広く知られていました。しかし、多くの企業で移行準備に想定以上の時間を要している実情を踏まえ、移行期間が2年間延長され、現在は「2027年問題」と呼ばれています。

2006年のSAP ERP6.0リリースから2030年の延長保守終了までの流れを示し、2027年に標準保守が終了することを示した年表

長く続くSAP製品のサポート終了問題

SAP製品のサポート終了は今回に限った話ではなく、これまでも多くの企業が移行対応を迫られてきました。
例えば、1990年代から広く利用された「SAP R/3」は2000年代以降に「SAP ERP 6.0」へと移行され、その後は「SAP S/4HANA」への切り替えが推奨されています。

しかし日本企業では、こうした移行が先送りされるケースが多く、結果として旧システムのまま運用されてレガシー化が進行しました。2027年問題は、こうした過去からの課題が顕在化する重大な転換点となるでしょう。

SAP S/4HANAへの移行が進まない理由

SAP S/4HANAへの移行が進まない背景には、いくつかの複雑な要因があります。

まず、長年の運用で蓄積されたデータやアドオンが複雑化しており、整理や移行の手間が膨大になっていることが挙げられます。また、業務プロセスが属人化している企業では、現場のノウハウが明文化されておらず、移行時の再設計が困難です。さらに、IT人材不足移行プロジェクトを推進する体制の確保も課題だといえるでしょう。

これらが「どこから手をつけるべきか分からない」「リスクが大きく踏み出せない」といった意思決定の停滞を招いており、結果として移行が進まない原因となっています。

SAP ERP 6.0サポート終了による企業への影響

2027年末のメインストリームサポートが終了した後も、企業がSAP ERP 6.0を使い続けることは可能です。しかし、その選択は企業経営にさまざまな負の影響を及ぼす可能性があります。

<SAP ERP 6.0サポート終了による企業への主な影響>

セキュリティリスクの増大

サポートが終了したシステムを使い続けるリスクの一つが、セキュリティの脆弱性です。新たな脆弱性が発見されても、SAP社からセキュリティパッチが提供されなくなるため、システムは常にサイバー攻撃の脅威にさらされることになります。

近年、企業の基幹システムを狙ったランサムウェア攻撃や、サプライチェーンの脆弱性を突いた攻撃が増加しており、万が一、基幹システムが停止したり、機密情報および顧客情報が漏洩したりした場合の事業インパクトは計り知れません。

コンプライアンス対応の困難化

企業活動は、さまざまな法制度の下で行われています。日本でも近年、インボイス制度や電子帳簿保存法など、企業の経理・会計業務に大きな影響を与える法改正が続いています。

サポートが終了したERPシステムでは、こうした新たな法制度に対応するための更新プログラムが提供されません。これにより、企業はコンプライアンス違反のリスクを抱えることになり、追徴課税や社会的信用の失墜につながる可能性があります。

ビジネス機会の損失

現代のビジネス環境では、市場の変化に迅速に対応する能力が求められます。しかし、老朽化したレガシーシステムは、新しいビジネスモデルやサービス導入の足かせとなります。

例えば、サブスクリプション型のサービスを始めようとしても、既存のERPが対応できずに断念せざるを得ないといったケースです。結果として競合他社に後れをとり、大きなビジネス機会を損失するリスクが高まります。

2025年の崖との関連性

2027年問題と密接に関連するキーワードとして「2025年の崖」が挙げられます。
2025年の崖とは、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」の中で、日本企業に対して鳴らした警鐘のことです。
具体的には、もし日本企業が既存の複雑化・老朽化したレガシーシステムを刷新できず、DXを推進できなければ、2025年以降、最大で年間12兆円もの経済的損失が生じる可能性があると指摘しています。

この経済損失は、レガシーシステムの維持管理費がIT予算の大半を占めることによる「守りのIT投資」の増大や、新たなビジネスモデルの創出機会を逃すことなどが原因とされています。SAPの2027年問題は、まさにこの2025年の崖を構成する具体的な一要素といえるでしょう。

多くの日本企業にとって、SAPは生産管理、販売、会計などの事業の根幹を一元的に担っています。この基幹システムがレガシー化し、データのサイロ化や分断を招くことが、全社的なDX推進の大きな足かせとなり、ひいては国際競争力の低下に直結するリスクがあるのです。

2027年問題に対して企業がとるべき対策

SAP ERP 6.0のサポート終了が迫る中、企業はどのような対策をとるべきなのでしょうか。
ここでは、主な四つの選択肢について、それぞれの特徴や留意点を整理します。

<SAP ERP 6.0のサポート終了に向けて企業がとる選択肢>

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SAP S/4HANAへの移行

SAP社がSAP ERP 6.0の公式な後継製品として位置付けているのが、次世代ERPであるSAP S/4HANA です。

<SAP S/4HANAへ移行する利点>

  • インメモリデータベースによる高速処理や、AI、機械学習といった最新技術を活用し、リアルタイム経営や業務プロセスの高度化を実現できる

<SAP S/4HANAへ移行する際の留意点>

  • 移行には高度な技術力が求められ、ライセンス費用や開発コストを含めた投資計画、一定期間のプロジェクト推進が必要

    S/4HANAに精通した人材の確保や、適切なパートナー選定がプロジェクト成功の重要なポイントとなる

他社のERPへの移行

SAP社はSAP ERP 6.0の後継としてSAP S/4HANAを位置付けていますが、企業の業種・規模・IT戦略によっては、他社ERPの検討も選択肢の一つとなります。国内外の他社製ERPパッケージへ乗り換えを検討する企業も増えています。

<他社のERPへ移行する利点>

  • 現行の業務要件やIT戦略をゼロベースで見直し、自社に最も適合したシステムを再構築できる可能性がある

    SAPに固定化されていた業務プロセスを刷新できる

<他社のERPを採用する際の留意点>

  • SAPで長年蓄積した業務データ、アドオン資産、ノウハウの移行が困難な場合が多く、ゼロからのシステム構築となり、プロジェクトが大規模化・長期化するおそれがある

    ユーザーの再教育に多大な労力とコストがかかる

SAP以外のSaaS型ERPへの移行

近年では、クラウド上で提供されるSaaS型のERPシステムも増え、有力な選択肢となっています。初期費用を抑え、月額利用料で導入できるため、中堅・中小企業を中心に、有力な選択肢として検討されるケースも増えています。

<SaaS型ERPへ移行する利点>

  • ベンダー側でシステムのバージョンアップや保守が行われるため、自社での運用負荷が大幅に軽減される

<SaaS型ERPへ移行する際の留意点>

  • 機能のカスタマイズに制限がある場合が多く、独自の複雑な業務プロセスを維持したい企業には不向き

    長期的に見ると、月額利用料がオンプレミス型よりも高くなる可能性がある

延長保守の利用

移行が間に合わない、または一時的に現行環境を維持したい場合には、延長保守の利用という選択肢もあります。SAP社の公式サポートではありませんが、SAP社以外の第三者ベンダーが提供する保守サービスを活用することで、一定期間SAP ERP 6.0を継続利用することが可能です。

<延長保守を利用する利点>

  • SAP社の公式サポートよりもコストを抑えつつ、当面のシステム運用を継続できる

<延長保守を利用する際の留意点>

  • 基幹システムの根本的な課題解決にならない

    法改正への対応や新機能の追加は期待できず、DXの遅れが深刻化する

    相対的にセキュリティリスクが高まる

ERPシステム移行の実施手順

ERPシステムの移行は、周到に準備しなければならない大規模プロジェクトです。現行サポートが終了する2027年末から逆算して、少なくとも1年半~3年程度の準備期間が必要とされています。
ここでは、一般的な移行手順を五つのステップで解説します。

現行システムの棚卸から移行方針決定、計画策定、新システム構築、運用開始までのERP移行プロセスを5段階で示した図解

1. 現行システムと業務プロセスの棚卸

移行プロジェクトの最初のステップは、現状を正確に把握することです。現在使用しているシステムの構成やデータ、業務プロセスを徹底的に分析し、文書化します。
特に、過去に追加開発したカスタムレポートや、外部システムとの連携、権限設定などを全てリストアップし、その必要性を一つ一つ評価することが重要です。
同時に、現場のユーザーからヒアリングを行い、業務上の負担や非効率な運用になっている部分を洗い出します。

ここで重要なのは、単に現状の課題を把握するだけでなく、将来を見据えた視点で棚卸を行うことです。
以下のような観点から包括的な検討を行いましょう。

<将来を見据えた棚卸の視点>

  • データ活用戦略の明確化

    システムの棲み分けの見直し

    業務プロセスの抜本的な見直し

この段階で「現行システムの単純な移行」ではなく、「将来のビジネス戦略を支えるシステム基盤の再構築」という視点で議論を深めることが、移行プロジェクトの成否を左右します。

2. ニーズ・移行方針の決定

次に、現状分析で明らかになった課題と将来のビジョンを踏まえ、移行先としてどの選択肢が最適かを比較検討します。

SAP S/4HANAへ移行するのか、あるいは他社製ERPやSaaS型ERPを導入するのかを決定します。
SAP S/4HANAへ移行する場合は、既存の環境やデータを可能な限り引き継ぎつつ移行する「ブラウンフィールド」や、業務プロセスを標準機能に合わせて再構築する「グリーンフィールド」といった移行方式の中から、自社に合ったものを選択する必要があります。

3. 移行計画の策定

移行方針が固まったら、具体的なプロジェクト計画を策定しましょう。移行対象となるデータの範囲、業務プロセス、他システムとの連携仕様などを詳細に定義します。
また、「Fit to Standard」の原則に基づき、新システムでは可能な限り標準機能を活用する方針を立て、不要なカスタマイズを整理します。

これらを基に、詳細なプロジェクトスケジュール、必要な人員・役割、予算を策定し、支援を依頼するベンダーの選定と契約を進めるのもこの段階です。ステークホルダーとの期待値調整も重要になります。

※Fit to Standardについては下記をご参照ください。
Fit to Standardとは?メリットや導入する際のポイントを解説

4. 新システムの設計・構築

策定した計画に基づいて、新システムの設計と構築を本格的に進めます。新しいシステム構造や業務フロー、ユーザーごとの権限などを詳細に設計し、データ移行の準備も行いましょう。

この際、移行元となるデータの品質が低いと新システムで正しく活用できないため、重複データや古いデータを整理・統合する「データクレンジング」が極めて重要です。
並行して、主要な業務シナリオに基づいた操作テストを繰り返し行い、ユーザー向けのトレーニング資料の作成や社内教育も段階的に実施していきます。

5. システム移行・運用開始

最終テストとリハーサルを経て、いよいよ新システムへの本番移行を迎えます。移行直後は予期せぬトラブルが発生する可能性もあるため、旧システムをすぐには停止せず、一定期間は並行稼働させながら、慎重に稼働テストを実施します。

重要なのは、移行をゴールとしないことです。新システムの価値を最大限に引き出すためには、運用開始後の継続的な取り組みが欠かせません。
売上向上やコスト削減といったKPIを設定して導入効果をモニタリングしたり、ユーザーからのフィードバックを収集してシステムを改善したりする運用サイクルの確立が求められます。

2027年問題を経営改革のチャンスに

SAP ERP 6.0のサポート終了に伴う2027年問題は、単なるシステムの更新ではなく、企業の経営基盤や業務プロセス全体に関わる重要な経営課題です。この節目を「経営インフラの再構築」と捉え、将来の成長戦略やDX推進と連動させたシステム移行を計画的に進めることが求められます。
適切な意思決定と体制構築によって、移行プロジェクトは企業の競争力強化やデータドリブン経営への一歩となるでしょう。

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