投稿日:2026.01.08
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IBM Planning Analytics

グループ経営管理

セミナーダイジェスト

需要予測・計画の現在地とAIエージェントが実現する将来像 【前編】

近年、AIが多様なデータを統合し、将来的な需要をより高精度に予測する技術への注目が集まっています。気象情報やSNSの動向といった膨大な外部データまで分析対象が広がり、予測精度の向上がさらに期待されるようになりました。

企業にとって需要予測・計画は、在庫管理や人員配置、コスト最適化に直結する経営上の重要なテーマです。しかし、予測を取り巻く環境が複雑化し、高度な分析を求められる状況では、精度の向上に苦慮している企業も少なくありません。

AIの進化により多様なデータを用いた高精度な予測が可能になりつつある今、重要なのは技術だけに頼らないアプローチです。AIが導き出す客観的な予測値に人間の経験や知見を加え、より現実に即したシナリオを組み立てることが、何より重要になります。

本稿はスマート・アナリティクス株式会社、日本アイ・ビー・エム株式会社、株式会社アバントによる共催セミナーをもとに、AIを活用した需要予測の現在地と将来像について解説します。前編では、需要予測の基礎知識と分析精度を高めるポイントをお伝えします。

需要予測とは何か

まず需要予測の定義と基本的な枠組みを整理します。

基本的な定義と種類

需要予測とは、未来の販売量や売上を見積もる行為を指します。

予測そのものには3つのパターンがあります。
・売上高や販売数量といった具体的な数値の予測
・購買の有無や解約の有無といったYes/No型の予測
・数値予測に時間軸を加えた需要予測

単に「売れるか、売れないか」を判断するだけでなく、「いつ、どれだけ売れるか」を見通すことが需要予測の本質だと言えます。

データの型

予測結果として扱うデータの型は、大きく分けて2種類あります。

量的データ 売上、利益、顧客満足度、販売量などの数値データ
平均値を算出できる性質を持つ
2値データ 購入の有無や解約の有無などの質的データ
0か1で表現できる性質を持つ

データの型によって適用すべき分析手法が異なるため、どちらの型なのか見極めを誤ると、高度なアルゴリズムを用いても正確な予測はできません。そのため、予測分析の最初のステップとして、型の確認が不可欠です。

需要予測を成立させる2つの視点

需要予測を成り立たせるために必要な手法として、一般的に2つの視点があります。

1:時系列分析

時系列分析は、過去の供給量のトレンドから将来の需要量を推定する、基本的な手法です。売上や販売量の推移を時系列で追いかけ、その中にある法則性を抽出しモデル化することで活用します。

現在のAIツールは、時系列データの予測に使う統計モデルであるARIMAモデルや季節循環モデルなど、複数の中から最適なアルゴリズムを自動的に選択してくれます。ただし、そのためには過去の供給量データが十分に存在することが前提条件であり、データが不足した状態では機能を発揮できません。

2:要因分析

要因分析とは、何が商品購買に影響したかを特定するための分析手法です。

たとえば、エアコンや扇風機などは、気温の変動が売上に大きく影響することは想像しやすいでしょう。この他にも、ボーナス支給額、電気料金、消費者信頼感指数など、商品の売上に影響しうる要因を特定し、その影響度を回帰分析や機械学習で可視化させることで精度を高めます。

複雑なビジネス状況を紐解くために有効な手段だと言えますが、影響の度合いが大きそうな要因を適切に選び出す判断力が重要になります。この判断力はAIに頼るのではなく、現場の業務を深く理解している人間が、経験と洞察力を活かしてこそ発揮できる力です。

AIエージェントを活用した需要予測の最前線

需要予測をするうえで何を意識すべきなのか、最新ツールを紹介するとともに予測の精度を高めるためのポイントをお伝えします。

精度向上のために必要な要素

予測分析を成功させるには、ビジネス知識・分析理論・分析ツールという3つのノウハウが求められます。このなかでも特に重要なのは、ビジネス知識です。

高度な分析知識とともに、自社の課題を正しく把握していることが高精度な予測に寄与します。ビジネスを捉えている人だけが、分析ツールや分析理論を活かせるのです。

データ分析の経験が少ない場合は、CRISP-DM(Cross Industry Standard Process for Data Mining)というフレームワークに沿って分析を実施することが推奨されます。

このフレームワークは、図に示したの6つのステップで構成されますが、データ分析にかかる工数の約8割は、「ビジネスの理解」と「データの理解」、「データの準備」という前半の3ステップに費やされます。この事実は、精緻な分析結果を得るために、モデリングやモデルの評価よりも、前段階にある業務理解や準備作業が重要だと物語っています。

最新のツールと活用例

有力な予測分析ツールとして、IBM SPSS Modelerが挙げられます。ノーコード・ビジュアル操作型の分析ツールで、アイコンをつなげるだけでデータの読み取りから加工、グラフによる可視化、機械学習まで実行できます。

そのため、プログラミング知識がなくても、以下のような高度な分析が可能です。
・外部要因(天候、ボーナス支給額など)を組み合わせた分析
・時系列予測と要因分析の同時実行
・上振れ・下振れを含むシナリオ予測の提示
・再利用可能なワークフローの構築と組織内共有

なお日本語テキストマイニング機能(プレミアム版に搭載)を利用すると、SNSに投稿される非構造データも構造データに加えることができ、量的分析に活用できます。

人間が現場で判断する力は必須

予測分析ツールの活用により、経営判断の精度や生産性の向上が期待できるのは間違いないでしょう。ただし分析ツールで出力されるのはあくまで予測値に過ぎないという点は注意しなくてはなりません。

予測結果を実際の計画へそのまま落とし込むのではなく、人間が予測値の上下幅を見ながら現実的な数値を設定する必要があります。AIの時代においても、現場の知見が不可欠なことには変わりありません。ツールを活用する技術の習得も重要ですが、まずは現場での経験や勘所を身につけることに重きを置くべきでしょう。

AIエージェント活用の現場での課題

昨今は「AIエージェントの時代」と評されるほど、予測・分析へのAI活用に注目が集まっています。しかし需要予測や計画策定にAIを活用するにはさまざまな課題もあります。これらの典型的な課題や、AIが有効なシーンを紐解きます。

データ・分析・プロセスの壁

予測・分析へのAI活用において、以下のような課題が存在します。

データ面の課題

多くの企業では、営業部門は営業支援システム、生産部門は生産管理システムと、それぞれ独立したシステムでデータを管理しているため、統合的な分析が困難です。

さらに手入力の運用も多く、品質の不安定さや欠損データの多さが分析精度を低下させる要因となっています。天候や市場動向など外部データについても、その重要性は認識されながらも、実際の活用は進んでいないケースが多く見られます。

分析面の課題

専門知識が必要とされるが故に、多くの現場担当者が統計解析を使いこなせずにいます。一方、データサイエンティストは高度な分析スキルを持ちながらも、財務知識や営業的な観点が不足していることが多く、ビジネスの実態に即した分析がしづらい傾向にあります。

結果として分析業務が特定の人材に依存する属人化が進み、担当者によって分析精度にばらつきが生じるという問題が発生します。

プロセスや組織面の課題

経営の求めるスピードに分析が追いつかないというのも起こりがちな問題です。必要データが揃うまでに時間がかかり、分析結果が出るころには状況が変化してしまいます。タイムリーな意思決定ができない状態が延々と繰り返されてしまうのです。

シミュレーションのシナリオの不足から、市場環境の急激な変化に対する備えが不十分な企業も多く存在します。また、AIの予測結果に対し、最終的な意思決定の説明責任を誰が負うのかというAI時代ならではの組織的な課題もつきまといます。

AIエージェントの活用シーン

ここからは、AIが真価を発揮しやすい場面について議論します。その回答は、AIの強みである大量データ処理と自動モデリング能力を最大限に活かせる領域にあります。

販売実績の低調な商品の需要予測は、最も効果的な活用場面の一つです。売れ筋商品なら過去のトレンドが明確なため、シンプルな分析でも十分な精度が期待できます。一方、3か月に1回程度しか受注がない商品では、散発的なデータしか得られません。人間が計算に基づいて規則性を見出すことは困難であり、このような不規則なデータの処理こそ、AIが得意とします。

複数の変動要因が複雑に絡み合う状況での予測でも、AIは威力を発揮します。商品売上は気温、イベント、競合の動き、経済指標など多様な要因の影響を受けますが、すべての要因を同時に考慮し、相互作用まで含めて予測を立てることは人力では不可能だと言ってもよいでしょう。しかしAIなら、人間の直感では十分に対応できない複雑性の高い領域でこそ、真価を発揮します。

まとめ:複雑な条件下こそAIエージェントに最適

需要予測において、AI技術の進化により従来では困難だった精緻な分析が可能になりました。特に取引頻度の少ない商品の動向把握や、多様な変動要因が絡み合う状況下での分析において、AIは人間の能力を大きく超える処理能力を発揮します。

しかし、企業の現場では部門間でのデータ分断、分析の属人化、意思決定の遅れといった組織的な課題が依然として存在します。AIが導き出すのはあくまで推定値であるという事実も重要です。その数値を実践的な事業計画へと落とし込むには、市場を熟知し顧客動向を肌で感じ取ってきた現場担当者の判断が欠かせません。

後編では、需要予測データを活用した、計画と収益シミュレーションについて、これらの予測・プランニングに役立つAIエージェントの将来像について解説します。
需要予測・計画の現在地とAIエージェントが実現する将来像 【後編】

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