投稿日:2024.04.15|最終更新日:2025.10.21
投稿日:2024.04.15
最終更新日:2025.10.21

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SCM(サプライチェーンマネジメント)とは?導入メリットや注意点を解説

企業の競争力向上や効率化を図る上で、SCM(サプライチェーンマネジメント)への注目が高まっています。SCMとは、製品の原材料の調達から設計、製造、物流を経て顧客の手に渡るまでのプロセスを企業が統合的に管理して、全体の効率化と最適化を図る経営管理の手法です。

この記事では、SCMの基本的な概念や注目される背景、導入ステップ、期待される効果、直面する課題、そして未来の展望について解説します。

SCM(サプライチェーンマネジメント)とは?

SCMとは「Supply Chain Management(サプライチェーンマネジメント)」の略で、調達、製造、在庫管理、物流、販売といったサプライチェーン上の一連のプロセスを統合的に管理する経営手法のことです。個別最適に偏りがちな部門間の業務を連携させることで、全体としての効率化と最適化を図ります。

SCMの導入により、需要予測の精度向上や在庫の最適化、リードタイムの短縮、コスト削減といった多岐にわたる効果が期待できます。これにより、企業は競争力を高め、顧客満足度の向上も実現できるのです。

■ SCMのイメージ図

SCMと従来の管理手法との違い

従来の管理手法は、調達、製造、物流、販売といった各部門が個別に最適化を図る形が主流でした。しかし、部門ごとの最適化だけでは、サプライチェーン全体としては非効率が生じる場合があります。そこで、部門を横断した情報共有と連携を重視し、全体最適化を目指す新たな管理手法としてSCMが注目されています。

従来の管理手法とSCMの主な違いは下記のとおりです。

■ 従来の管理手法とSCMの主な違い

従来の管理手法 SCM
最適化の範囲 調達、製造、物流、販売など各部門の個別最適化 部門間の情報共有と連携を前提とした全体最適化
供給方式 プッシュ型(生産計画に基づく大量供給) プル型(需要に基づく供給、柔軟な対応)
在庫管理 過剰在庫や欠品が発生しやすい 過剰在庫や欠品を減らし、在庫の適正化を図る
顧客ニーズへの対応 部門ごとの対応で顧客ニーズを反映しにくい 顧客ニーズに基づく迅速で柔軟な対応が可能
情報共有 部門ごとに情報が閉じられることが多い 部門間での情報共有が活発でリアルタイムな連携が可能

SCM(サプライチェーンマネジメント)が注目される理由

現代のビジネス環境において、SCM(サプライチェーンマネジメント)が注目を集める背景には複数の要因があります。企業が競争力を維持・強化するには、サプライチェーン全体を可視化し、迅速かつ柔軟に対応できる体制が不可欠となっています。

<SCMに注目が集まる背景>

ビジネス環境の変化とグローバル化

近年は企業のグローバル化が進み、製品の原材料の調達や製造、販売の拠点も世界各国に拡大できるようになりました。企業は世界を相手にしたビジネス展開が求められているのです。国際的な競争力を維持・強化するためにも、サプライチェーン全体の最適化を図るSCMは欠かせません。

顧客ニーズの多様化

インターネットが当たり前になった現代において、消費者は自ら情報を得て自身のニーズに見合う商品やサービスを選べるようになりました。消費者のニーズは多様化し、企業にはそれに応えるための供給が求められています。また、ネット通販などECも普及したことで、販売と配送が一体化したビジネスモデルも増加しました。

こうした理由もあり、需要と供給のバランスを踏まえて必要なものを必要なだけ生産し、プロセス全体の最適化を図るSCMはより重視されるようになっています。

コスト削減と生産の効率化

SCMが求められる理由には、少子高齢化による労働人口減少や労働条件などの問題による人手不足も挙げられます。
多くの業界で人材不足と人手不足が深刻化する中で、労働力の減少を補うためのコスト削減や生産の効率化実現に向けたSCMが求められるようになりました。

SCM(サプライチェーンマネジメント)の一般的なプロセス

SCM(サプライチェーンマネジメント)は、製品の原材料調達から生産、物流、販売、さらに返品対応までを一貫して管理する仕組みです。全体の流れを理解した上で、各プロセスを戦略的に最適化することが、コスト削減や品質向上、そして競争力強化につながります。

ここでは、SCMの代表的なプロセスについて順を追って見ていきましょう。

<SCMの一般的なプロセス>

1. 調達管理

調達管理は、必要な原材料や部品を適切なタイミングで確保するプロセスです。単なる購買活動にとどまらず、サプライヤーとの戦略的なパートナーシップ構築や調達リスクの管理も含まれます。効果的な調達管理により、品質向上とコスト削減を同時に実現できるでしょう。
また、複数のサプライヤーとの取引関係を構築することで、供給リスクを分散し、安定した生産体制を支えることが可能になります。

2. 製造管理

製造管理では、生産計画の立案から実行、品質管理までを一括して行います。需要予測に基づいた計画を立てることで、過剰生産や生産能力不足といったリスクを最小限に抑えることが可能です。
さらに、IoT(モノのインターネット)やAIなどの最新技術を活用すれば、設備の稼働状況を把握して故障を未然に防ぐなど、生産の安定性を高める取り組みも可能になります。

3. 在庫管理

在庫管理は、適正在庫の維持を通じて保管コストの削減と欠品防止を両立させる重要なプロセスです。需要予測の精度が高まれば、過剰在庫を抱え込むリスクを減らせるだけでなく、欠品の発生も防げます。
さらに、在庫をリアルタイムで可視化することで、迅速な意思決定が可能となり、在庫回転率の改善やキャッシュフローの健全化にもつながります。

4. 物流管理

物流管理では、製品を効率的かつ確実に顧客へ届けるための輸送最適化を行います。輸送ルートを見直して最適化できれば、コストの削減や輸送時間の短縮を実現することが可能です。また、返品プロセスも含めた包括的な物流体制を構築することで、サービス品質の向上とコスト最適化の両立が可能となります。

SCM(サプライチェーンマネジメント)の導入ステップ

SCM(サプライチェーンマネジメント)を導入し効果的に運用していくためには、適切なステップを踏んで十分に準備する必要があります。
下記の四つのステップに沿って、導入に向けた準備と効果測定をしていきましょう。

CMの導入ステップを示す図解

1. 目的・課題の明確化

まずは、SCMを導入する目的や、企業が抱える課題を洗い出し、社内で共有します。その課題を解決するにあたり、SCMが有効かどうかを検討しましょう。
SCMで解決できる課題と判断できた場合は、導入後に達成すべき目標も明確にした上で、具体的な管理手法を決めていきます。

2. 体制構築

次に、SCMの導入がスムーズに進められるように、SCM導入プロジェクトのメンバーや、導入を主導する部門を決めます。プロジェクトを率いる責任者も選定しましょう。
人員を選定したら、SCM導入の目的やプロジェクトの目標をメンバー間で共有し、個々の役割と具体的な業務分担を決めます。

3. ツール・サービスの選定

SCMを導入するために必要なツールやサービスを比較検討し、選定します。SCMをサポートするサービスには、次のようなものがあります。

<SCMをサポートするサービス例>

  • クラウド上でのサプライチェーンの流れの一元管理を可能にし、分析やシミュレーションもできるサービス

    需要予測や販売計画、在庫基準計画、分析レポートなどを提供するサービス

    基幹系システムとの連携によって業務データの入力・処理を自動化するサービス

SCM導入における課題も踏まえて、課題解決や業務効率化をサポートするツールやサービスを選びましょう。

4. 効果測定

SCMの導入によって具体的にどのような効果が得られたのか、また課題がどの程度解決できたのかの効果測定を行います。
効果測定によって改善点が見つかった場合は、次回の実行計画に改善策も含めてPDCA(計画・実行・評価・改善のサイクル)を繰り返し、効果を高めていきましょう。

SCM(サプライチェーンマネジメント)導入で期待される効果

SCMの導入は、単なる業務効率化にとどまらず、企業全体の競争力を高めるさまざまな効果をもたらします。
ここでは、SCMによって期待される代表的な効果について紹介します。

<SCM導入で期待される効果>

コストの削減

SCM導入によって製品の供給プロセスを最適化できれば、生産や物流のコスト削減も可能となります。
例えば、物流プロセスにおいては、工場や店舗の立地を踏まえて、複数の工場の製品や複数の店舗への製品輸送を同一の配送業者が担当することで、物流コストを削減できます。

リードタイムの短縮

SCMを導入し、POS(販売時点情報管理)の情報や営業担当者の受注状況などを踏まえた需要予測を立てることで、原材料の調達、製品の製造、在庫管理、物流、販売の各プロセスの計画立案に活用できます。
これにより、サプライチェーン全体を最適化して無駄を省けるようになり、各プロセスにかかるリードタイムの短縮が可能となります。

在庫の最適化

SCMを導入することで、在庫の最適化がかないます。適切な在庫管理ができていないと、需要に見合わない生産をしたり、販売時期の判断ミスにつながったりして、大量の在庫を抱えてしまうリスクが高くなります。売れ残りが多ければ多いほど損失も大きくなり、経営を圧迫してしまうでしょう。
また、在庫数が少なすぎる場合も、需要が増加した際に十分な供給ができず、機会損失を招く原因となります。

SCMを導入することで、リアルタイムの需要予測と情報共有ができ、適切な在庫管理の実現が可能です。市場の状況と消費者ニーズに見合う在庫を持てるようになり、機会損失を減らしつつ売上増大につなげていくことが可能です。

人的リソースの最適化

SCMの導入後は、サプライチェーンの各プロセスにおけるモノ・カネ・情報の流れが可視化されます。そのため、需要拡大や市場状況の変化をリアルタイムで察知して、必要な人的リソースの確保や調整ができるようになるのです。

これにより、「需要が少ない時期に必要以上のスタッフが勤務している」「繁忙期に人手不足に陥る」といった状況を避けられるようになり、人的リソースの最適化も可能となります。

顧客満足度とサービス品質の向上

SCMの導入により、顧客の多様化・変動するニーズをリアルタイムで把握し、柔軟に対応することが可能になります。これにより、顧客満足度の向上が実現するでしょう。
また、品質管理の強化により不良品の流通が抑制され、クレーム減少やブランドの信頼性向上にも寄与します。

さらに、カスタマイズ商品の受注生産やECサイトのリアルタイム配送追跡など、顧客が自身の注文状況を把握できるサービスを提供する企業もあり、こうした取り組みは顧客の安心感と満足感向上に貢献します。

経営判断の迅速化

SCMでは、データ化やモニタリングによってサプライチェーンの各プロセスの状況を可視化し、課題を洗い出すこともできます。取引先や市場の状況もリアルタイムで把握でき、ニーズや課題に合わせた迅速な経営判断ができるでしょう。

消費者ニーズへの柔軟な対応や、トラブル解決に向けての迅速な対応ができるようになることは、特に大きなメリットです。スピーディーかつ的確な経営判断ができれば、経営におけるさまざまなリスクを抑えられ、トラブルを未然に防げるようになります。

SCM(サプライチェーンマネジメント)導入における課題

SCM(サプライチェーンマネジメント)は多くのメリットをもたらす一方で、導入や運用にあたっては乗り越えるべき課題も存在します。
ここでは、SCM導入時に企業が直面しやすい代表的な課題を取り上げます。

<SCM導入における主な課題>

組織間連携の難しさ

SCMの効果を最大限に引き出すには、社内の部門連携に加えて、外部のサプライヤーや物流業者との協力体制が欠かせません。しかし、異なる企業文化や業務プロセスを持つ組織同士が足並みをそろえるのは簡単ではありません。

相互に信頼関係を築くためには、継続的な情報共有や定期的なコミュニケーションが必要です。すぐに成果が見えるものではなく、一定の時間と労力をかけながら少しずつ歩み寄ることが求められるでしょう。

導入時の負担の大きさ

SCMの導入には多大な時間と労力が必要です。既存システムとの連携や業務プロセスの再設計が必要になるため、立ち上げ期には一時的に業務効率が下がるリスクもあります。また、システム導入には高額な初期投資が必要になることも多く、特に中小企業にとっては大きなハードルとなるでしょう。

さらに、社内に専門知識を持つ人材が十分でない場合、外部のコンサルタントやベンダーに頼らざるを得ないケースも少なくありません。導入を成功させるには、コスト・人材・時間といった複数の制約をどう乗り越えるのかを、事前にしっかり検討する必要があります。

最新技術で進化するSCM(サプライチェーンマネジメント)

テクノロジーの進化により、SCM(サプライチェーンマネジメント)も大きな変革を遂げつつあります。IoTやAI、ロボティクスといった先進技術は、サプライチェーン全体の可視化や自動化、最適化を加速させ、従来では実現困難だった高度な管理体制の構築を可能にしています。

<SCMの現在>

インダストリー4.0による製造プロセス変革

「インダストリー4.0」とは第4次産業革命のことで、IoTやAI、ビッグデータの活用によってもたらされる技術革新を指します。

インダストリー4.0の流れの中で、IoT・AI・ロボティクスを融合させた「スマートファクトリー」が現実のものとなっています。
例えば、製品の製造や管理におけるメンテナンス機能は、従来は機器が故障したり障害が発生した場合に修理を行う方法が主流でした。しかし、インダストリー4.0では、故障や障害が発生する前に先進技術が予測し、故障や障害を未然に防ぐための対策を講じます。

さらに、品質管理の自動化や生産ラインの柔軟な構成によって、顧客ごとの多様な要望に応える「マス・カスタマイゼーション」も効率的に実現できるようになりました。
製造現場の在り方そのものが、今まさに変革を遂げているといえるでしょう。

リアルタイム連動によるサプライチェーンの可視化

物理的なサプライチェーン全体をデジタル空間に再現し、現場とシステムをリアルタイムで連動させる仕組みも広まっています。現場の状況を瞬時に把握できるだけでなく、シミュレーションを通じて「もし○○が起こったら」という仮想シナリオを検証することも可能です。

これにより、異常を早期に発見して即座に対応できる体制が整い、計画の精度も格段に高まります。複雑化するサプライチェーンにおいて、リアルタイム連動による可視化は経営層にとって意思決定の強力な支援ツールとなるでしょう。

SCM(サプライチェーンマネジメント)の未来と新たな課題

今後のSCM(サプライチェーンマネジメント)には、効率性だけでなく「レジリエンス(回復力)」や「サステナビリティ(持続可能性)」といった視点も不可欠です。地政学的リスクや環境問題など、複雑化する外部環境に対応するために、サプライチェーンの在り方も進化を求められています。

ここでは、今後のSCMを考える上で重要となる三つのテーマについて解説します。

<SCMの未来と課題>

サプライチェーン・レジリエンスの強化

パンデミックや自然災害、地政学的な緊張の高まりにより、従来の効率重視型サプライチェーンでは対応しきれないリスクが顕在化しました。今後は危機が発生しても迅速に回復できる「サプライチェーン・レジリエンス」の構築が欠かせません。
複数拠点での調達・生産、サプライヤーの多様化、在庫の適切な分散といった施策を組み合わせることで、予期せぬ事態に対してもしなやかに対応できる体制が求められるでしょう。

サステナビリティ対応の必須化

気候変動や人権・労働問題といった社会的課題は、企業活動を評価する上で無視できない要素となっています。その影響はSCMにも及び、調達から生産、物流に至るまで「サステナブルな仕組みづくり」が強く求められるようになりました。
責任ある調達や環境負荷の低い物流網の取り組みは、単なるイメージ戦略にとどまらず、取引の継続や投資家からの評価にも直結します。対応が遅れれば、競争力そのものを失いかねません。

地政学的リスクと戦略的自律性の確保

米中対立や地域紛争など、地政学的リスクの高まりは企業のサプライチェーンにも大きな影響を与えています。特定の国や地域に依存したサプライチェーンは、そのまま重大なリスク要因となるからです。

今後は、経済安全保障の観点からも「戦略的自律性」を確保することが重要になります。供給先の多様化やリスク分散に加え、生産拠点の国内回帰や近隣国へのシフトなど、複数の選択肢を持ちながら柔軟に対応できる体制づくりが求められるでしょう。

※S&OPについては、下記をご参照ください。
注目が高まるS&OPとは?SCMとの違いや導入のポイントを解説

SCM(サプライチェーンマネジメント)の効果的な導入・運用には
システムを活用しよう

SCM(サプライチェーンマネジメント)は、サプライチェーンの各プロセスの最適化とそれによる企業の売上最大化に欠かせない経営管理手法といえます。
企業のグローバル化やビジネスモデルの変化なども背景に、昨今はSCMのニーズが高まっている状況です。企業はSCMに関する正しい知識を深めて導入方法を検討し、実行することで業績向上につなげることができるでしょう。

SCMを効果的に導入・運用するためには、各企業の目的や課題に合ったツールやサービスを活用することが大切です。そのためにも、導入前に自社の課題を洗い出し、その課題を解決できるツールやサービスは何なのか比較検討することをおすすめします。

SCMについてのお困りごとや導入のご相談など、株式会社アバントにお気軽にお問い合わせください。

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