投稿日:2024.02.02
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グループ経営管理

非財務情報マネジメント

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ノウハウ

長期的な企業価値向上のために何をすべきか? ~ROC算出とカーボンフットプリント可視化のポイント~

2023 年 3 月期よりサステナビリティ情報に関する開示が義務化され、多くの企業でガバナンスや指標、戦略など非財務情報の再検討が行われています。一方で、国際社会では非財務情報の開示基準が乱立し、企業や投資家の間で混乱が生じていました。

自社にとって、企業価値向上に繋がる開示内容や指標とは一体何か。
本コラムでは、「長期的な企業価値向上のためには何をすべきか?」をテーマに、施策の 1 つとして、ROC(Return On Carbon:炭素利益率)の算出とカーボンフットプリントの可視化についてご説明いたします。

1)企業価値とは

そもそも企業価値とは何でしょうか。

企業価値とは、会社全体の経済的価値のことで、将来的に生み出す収益を現時点の価値に換算し、投資においての根拠や基準になるものです。
企業価値の高さは的確な事業運用が行われていることを示しており、将来キャッシュフローを多く生み出す可能性も高くなります。こういった観点から社会的評価も高まり、株価向上に繋がる好循環を生み出すことができるのです。

企業価値の概念は多様な考え方・表現方法が存在し、これまで重視されてきた財務諸表に示される財務情報だけでなく、昨今では非財務領域における取り組みや開示情報が企業価値向上の重要ファクターになっています。

次に、企業価値向上に繋がるための見るべき企業指標の 1 つとして、「ROC(炭素利益率)」について説明いたします。

2)長期的な企業価値を測る ROC(炭素利益率)

多くの企業では「長期的な企業価値の最大化」を目指している一方、実際に自社を評価する指標は ROA(純資産利益率)や ROE(自己資本利益率)のような短期的指標に終始している場合が多く、長期的な価値を測るための指標も取り入れることで、よりバランスの取れた経営指標を定点的に見ていくことが可能となります。
長期的価値を測るための指標として ROC(炭素利益率)があり、これは企業の利益を CO2排出量で割って算出する経営指標であり、CO2 をどれだけ減少させ効率的に稼いだかを示します。

昨今のサステナビリティ経営において、CO2 排出量削減への取り組みは企業価値を判断するステークホルダーにとっても重要な指標となりますが、企業活動が活発になればおのずと CO2 排出量が増えることから、企業の成長と CO2 削減の両立のためには長期的な目線での企業戦略と計画策定が必要と言えるでしょう。

3)カーボンフットプリント可視化に向けた課題と取り組み方

続いて、ROC 算出と密接に関連するカーボンフットプリント可視化についてご説明いたします。

カーボンフットプリントとは、商品やサービスのライフサイクルの各過程で排出された「温室効果ガスの量」を追跡した結果、得られた全体量を CO2 排出量に換算して表示することです。
世界的に CO2 排出量削減のための可視化の必要性は高まってきており、可視化の対象は自社の排出量(Scope1-2)だけでなく、他社の排出量(Scope3)にも及んでいます。
可視化の対象と合わせて、その目的においても ROA と関連する「自社の CO2 排出量を把握する」と「自社製品の排出量を、取引先に提示する」の 2 つの観点があり、いずれにも取り組むことで企業価値向上のみならず、市場における製品競争力の強化にもつながるでしょう。

出典:環境省公式サイト グリーン・バリューチェーンプラットフォーム [排出量算定について]サプライチェーン排出量全般について

しかしながらカーボンフットプリント可視化の重要性が高まる中、企業では以下のような要望や課題を抱えています。

・標準的な計算ルールで、正しくカーボンフットプリントを計算したい
・ カーボンフットプリントを算出するための情報が散在している
・経年比較を行いたい

こうした課題の背景には、以下のような要因が挙げられます。
・必要な情報が各システムや Excel に分散しており、情報集約に手間と時間を要すること
・製品、サービスのライフサイクルが多岐にわたり、サイクルごとの計算の積み上げを手作業で行う複雑さがある

カーボンフットプリント可視化に取り組むためには、情報の集約と、算出のための計算を担うシステムを導入することが有効ですが、CO2 排出量を算出する目的に留まると投資対効果が限定されるため、下記のような目的も加味することで、導入効果が最大化になります。
・散在した情報をデジタルアセット化し、需要変動や市況変動を捉えた機動的なデータ基盤を構築する
・より具体性・実効性のあるカーボンニュートラル戦略の立案を実現する判断材料を整える

ROC 算出においてもカーボンフットプリントに関連する非財務情報と、収益に関連する財務情報いずれも情報が集約され、活用できる基盤が整うことで、前年度との比較や長期目線での戦略目標の立案がよりスピーディに実現されるでしょう。

株式会社アバントでは、本コラムでご紹介したようなお客様の企業価値向上を実現するコンサルティングサービスや、CO2 排出量に代表される非財務情報と財務情報の両軸を 1 つの基盤で管理・活用するソリューションのご提供を行っております。
ご支援内容に関するご不明点やご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。

執筆者

株式会社アバント マーケティング戦略部 企画グループ 室井さやか

<経歴>
大手外資系 IT 企業に SaaS ERP・CPM ソリューションのインサイドセールスとして入社、その後アカウントエグゼクティブとしてスタートアップ~中堅中小~エンタープライズまで幅広いお客様への提案活動に約 6 年間従事。特に経営管理の根幹を担う管理会計をはじめ、各部門で未だに課題の尽きない予実管理や計画系業務の効率化/高度化について、お客様ニーズを発掘する新規案件の創出から、製品導入後さらなる高度化を目指すお客様との伴走経験を積む。
お客様が直面する課題解決に取り組んできた現場経験と、複数の経営管理ソリューションの知見を活かしてマーケティング戦略に取り組むべく、2022 年アバントへ入社。

執筆日:2024/1/30

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