投稿日:2024.01.09
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ノウハウ

配賦とは?行う目的やメリット、効率化のポイントについて解説

企業が持続的に成長するためには、売上を追う一方で、コストを削減する意識を持つことが重要です。経営陣のみならず従業員までコスト意識を浸透させることができれば、さらなる生産性の向上が見込めるでしょう。
ここでは、収益やコストに対する従業員一人ひとりの意識を経営者レベルまで高め、事業成長を助ける配賦について詳しく解説します。

1)配賦とは横断的な費用を各部門に配分すること

配賦とは、複数の部門にまたがって発生する費用や、自社の製品やサービスの開発・販売にあたって横断的に必要となる費用について、関係する各部門に配分することです。配賦の「賦」には「割り当てる」の意味があり、経費を各部門に配分することから「配賦」と呼ばれます。
意味や語感がよく似た言葉に「割賦」や「按分」がありますが、割賦は代金を年単位、月単位で分割して支払ういわゆる「分割払い」のことで、按分は一定の基準に応じて分けることを指します。按分とはほぼ同じように思えますが、配賦は分けたものを配るところまでを含むのが異なる点です。

配賦を行うと、間接費を按分処理でき、各部門のコストが可視化されます。原価計算の精度が高まり、経営管理がスムーズに進むことも期待できるでしょう。

2)配賦を行う目的とメリット

配賦を行う目的とメリットを整理しておきましょう。

■各部門の費用負担を平等にする

経費には、製品やサービスの開発や販売に直接的にかかる「直接経費」と、付随する諸活動にかかる「間接経費」があります。前者は、製品の主要材料費、仕入費、直接作業する人の賃金などを指す直接労務費といった費用が、後者は、工場の照明などの光熱費、複数の製品に共通して使用する塗料、修繕費、出張費などが含まれます。

直接経費については、使用した部門と金額が明確であるため、配賦は不要です。一方、使用した部門を1つに特定できない間接経費は、会社全体で振り分けなければ正確な費用負担の状況を把握できません。

例えば、3つの部門が1つの工場でそれぞれ製品を開発している場合について考えてみましょう。施設を使用すれば水道光熱費や機器の使用料などが発生しますが、これらの経費をいずれか1部門に割り当てると、残りの2部門の負担がなくなり、不公平な経費負担になってしまいます。

また、企業が商品やサービスを提供するまでにかかった原価にも差異が生まれ、利益に対する生産活動の効率化を正確に把握できなくなったり、販売価格を適切に算出できなくなったりします。ひいては、経営計画に影響を及ぼすことになりかねません。
配賦によって、こうした不平等を是正し、各部門に平等な費用負担を課すことができます。

■部門ごとの利益だけでなく、会社全体の利益を意識させる

日々の業務に追われていると、自分の目標やチームの目標にばかり目が行き、会社全体の経営状況にまでは目を向けられない従業員もいることでしょう。
配賦により、自身が所属する部門や携わる製品の収益やコストを把握できるようになれば、「自分が管轄する部門や製品」から「会社全体」に視点が変わり、生産性向上に向けて積極的に取り組むようになることが期待できます。

■より正確な原価計算ができる

原価計算とは、自社の製品やサービスを世の中に送り出すまでにかかった原価を計算することです。材料費、加工費、設備の減価償却費、人件費など、かかった費用は全て原価に該当します。

算出した原価は、決算書類である財務諸表を作成する目的の他、製品やサービスの価格設定、不要なコストの把握と削減、翌期の予算を編成する際の基準、経営計画の数値的な根拠として使われます。
すなわち、企業が利益を維持する上で非常に重要であり、経営判断の際にも重視される数値であるといえるでしょう。

配賦を行うと、それまではやむなく1部門に割り当てていたコストが適正に分配されるため、原価計算の精度が高まります。
また、不要な経費、削減できる経費を見つけるのにも有効です。適切に無駄を排除できれば、より売上を増やすことが期待できます。

3)配賦のデメリットは基準設定の難しさ

配賦にはさまざまなメリットがある反面、デメリットもあります。それは、配賦の基準設定が難しいということです。
配賦を行う際には、何らかの基準を決めなくてはなりません。基準として使われることが多いのは、売上高や人員数、稼働時間などです。製品の製造やサービスの開発工程において発生する直接費用との関係性があり、数字として算出できるものである必要があります。

しかし、配賦の基準設定は簡単ではありません。配賦の対象となる間接経費は明確に把握しにくいことが多い上、基準をどこに設定するかによって各部門の負担が変わってくるからです。経費をできるだけ削減したいのはどの部門も同じですから、配賦にあたっては全員が納得できるルールで運用する必要があります。
配賦の基準を決定する際は、他社の事例なども参考にしながら全社でよく話し合い、妥協点を見つけることが大切です。

4)配賦基準の設定方法

配賦基準は、各企業が自社の状況や各部門の主張に応じて決めるもので、一般的に共通するルールはありません。ただし、配賦基準を細分化したり、段階的に設定したりすると、公平感が損なわれるため注意が必要です。
ここでは、一般的に採用する企業が多い配賦基準である、「部門別配賦」と「製品別配賦」について解説します。

部門別配賦

部門別配賦は、会社の組織を「直接部門」と「間接部門」に分け、間接部門にかかる費用を直接部門に振り分ける方法です。

直接部門は、売上や利益を直接的に生み出す営業部、製造部、開発部などのこと。間接部門は直接部門の対となる部門で、直接的に利益は生み出さないものの、直接部門を支援することで間接的に利益に貢献しているバックオフィスを指します。
部門別配賦は、費用の振り分け方によって「直接配賦法」「階梯(かいてい)式配賦方法」「相互配賦法」の3つに分かれます。

・直接配賦法

直接配賦法は、間接部門間での配賦は一切行わず、一括して直接部門に振り分けます。
配賦基準が直接部門のみに設定されるため、計算がシンプルで分かりやすいのがメリットです。一方、間接部門同士のやりとりを無視するため、詳細までは把握することができません。

・階梯式配賦方法

階梯式配賦方法は、間接部門に優先順位をつけ、優先順位が高い部門の費用から割り当てていく方法です。
間接部門間のやりとりも含めて考えるため、配賦先は直接部門とは限りません。直接配賦法よりは実態に即した配賦が可能ですが、計算は煩雑になります。

・相互配賦法

間接部門の費用を2段階に分けて配賦する方法を、相互配賦法といいます。
直接部門・間接部門を問わず、全ての部門に振り分ける一次配賦を行った後、一次配賦で間接部門に割り当てられた費用を直接配賦法によって直接部門にのみ割り当てます。煩雑な計算を要するものの、コストをより正確に把握したいときにはこの方法が適しています。

製品別配賦

製品別配賦は、製品の製造工程にかかる費用のうち、部門に配分できない費用を製品に配賦する方法です。
配賦の基準は、人員数や稼働時間、生産量、工数などを使うのが一般的です。一定の基準に沿って製品に振り分けるため、製品の利益額を管理したい会社に適しています。また、部門別の割り当てが不要になり、計算がシンプルです。

5)配賦の進め方

実際に配賦を行う際には、どのように進めていけばよいのでしょうか。部門別配賦と製品別配賦、いずれの場合も下記の手順で行います。

1. 配賦基準を決める

まずは、自社にとって適切な配賦基準を設定します。業界やその企業が重視するものによってベストな配賦基準は異なるため、自社の状況と配賦を行う目的を考慮して基準を決定しましょう。

配賦基準の決定は、配賦の肝といってもよいプロセスです。配賦基準には売上高、人員数、生産量、工程数、材料費、稼働時間などがありますが、設定した基準によって各部門の配賦結果が大きく異なる場合には、負担が増えた部門から不満が出る可能性があるため注意してください。
ただし、公平にしようとするあまり基準を複雑にしすぎると、原価計算でミスが起きたり、社内の理解に差が生じたりする可能性もあります。基準を決め、どうしても大きく差が出るときは、丁寧に説明して理解を得てから配賦を行うことが大切です。

2. 配賦率を計算する

配賦基準に基づいて配賦率を計算します。配賦率とは、部門ごとの費用負担の割合です。

例えば、売上高1億円に対して、A部門4,000万円、B部門3,000万円、C部門2,000万円、D部門1,000万円の売上だったとしましょう。この売上高を基準として配賦率を割り出すと、下記のようになります。

また、配賦基準を各部門における従業員の稼働時間で考えてみます。
全部門での稼働時間が100時間で、A部門20時間、B部門40時間、C部門30時間、D部門10時間だった場合、配賦率は下記のとおりです。

3. 配賦額(各部門の負担金額)を計算する

最後に、配賦額を算出します。配賦額は、各部門が負担する具体的な金額のことで、間接費用に配賦率を掛けることで算出できます。

先に挙げた売上高1億円に対する配賦率をもとに、総務部の人件費1,000万円の配賦額を求めるケースについて考えてみましょう。
A部門の場合、配賦率が40%ですから、下記のように計算できます。

<A部門における総務部の人件費の配賦額>

1,000万円×0.4=400万円
従って、A部門の配賦額は400万円になります。他部門にも割り当てて計算すると下記のとおりです。

6)配賦を効率的に行うポイント

配賦には多くのメリットがありますが、配賦基準を設定する難しさや、配賦率、配賦額の計算の煩雑さといったハードルがあるのも事実です。
効率的に配賦を行うために、下記の2点を意識するといいでしょう。

■企業規模に応じて導入を検討する
企業規模が大きくなると、事業部が増えたり、製品やサービスの種類が増えたりして間接費用の考え方が複雑になり、費用負担のバランスが崩れて不満につながるおそれがあります。
そのため、企業規模が小さいうちはあえて配賦の導入を見送り、ある程度の規模まで成長したところで導入するのも手です。配賦を導入しないことによる不公平感と、配賦によって生じる作業の手間を比較して、前者が勝る時期に配賦を導入するといいでしょう。

■システムを利用する
配賦を導入する場合、集計するデータが多岐にわたる上、間接費用の計算が煩雑なため、人力で行うのには限界があります。サービスや製品別に間接費をどのように配賦するか基準が複雑になったり、複数の配賦基準を設定する必要があったりするためです。

効率的かつ制度の高い配賦を実現するためには、システムの導入がおすすめです。各部門のデータを統合できる統合基幹業務システム「ERP(Enterprise Resources Planning)」を導入・活用することで、情報を集約し、タイムリーに情報を把握することができます。これにより、スピーディーかつ高精度の原価計算が可能です。
また、企業のさまざまな情報を一元管理できる、経営管理システムの導入も効果的でしょう。経営管理システムには配賦機能が備わっており、複雑な配賦にも対応できる上、多軸収益管理も実現できます。

7)配賦で公平に間接費を割り当てよう

横断的な間接費用を、関連する各部門に一定の基準で割り当てる配賦には、原価計算の精度向上、経営に対する従業員の意識向上など、さまざまなメリットがあります。
ある程度まで企業規模が大きくなったら、費用負担の公平性を維持するため、配賦の導入がおすすめです。導入時には、配賦を効率的に行うために、システムの導入も検討しましょう。

・アバントの配賦機能については下記をご参照ください。
 AVANT SMD

・経営管理システムの導入をご検討の方は、お気軽にお問い合わせください。
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