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グループ経営管理

連結原価管理

AVANT Cruise

利益最大化に向けた製品別収益の可視化 ~経営管理システム AVANT Cruiseの採用によるグローバル収益管理~

貝印株式会社

貝印株式会社は、1908年の創業以来、刃物づくりを中心に日本のものづくりを支えてきた総合刃物メーカーです。現在では中国・ベトナム・インドなどに製造拠点、米国・ドイツ・韓国・中国などに販売拠点を構え、海外売上比率は52%に達しています。(2024年実績)

その一方、グローバル展開が進む中、製品ごとの利益が十分に把握できず、拠点をまたいだグループ連結での数値把握が困難という課題が顕在化していました。

そこでグループ全体での収益構造を可視化し、全体最適の経営判断を実現するため、経営管理システム「AVANT Cruise」を採用し、まずはカミソリの製品別の連結原価・連結収益を算定できる仕組み構築に向け、取り組みを進められています。

プロジェクト推進の工夫やシステム採用による変化、今後の展望についてお話をお聞きしました。

貝印株式会社/カイインダストリーズ株式会社
グループ経営統括本部 経営企画・財務経理部 部長 長谷川 智彦 様
グループ経営統括本部 経営企画・財務経理部 マネージャー 西村 悠 様


※写真左から長谷川様 西村様
※所属・役職は取材当時のものです

  • 採用前の課題

    • グループ全体の収益構造が見えず、個別最適な判断に依存

    • 事業構造が複雑で、製品別の利益を把握できていなかった

    • 複数拠点をまたぐ商流により、グループ連結での収益が不明瞭

    • 各拠点のデータ収集・整備に工数がかかり、手作業の管理は限界だった

  • 採用により期待される効果

    • 製品別収益の可視化と全体最適への転換

    • カミソリ事業における製品別の連結原価・連結収益を算定可能に

    • 海外製造・販売を含めた商流全体の収益を把握

    • 国内単体では赤字に見えた製品がグループ全体では黒字など、収益構造の実態を可視化

    • 部門横断の議論が活性化し、原価改善や販売戦略強化の論点が明確化

グローバル展開に伴う収益構造の不透明化

―まずは事業概要をお聞かせいただけますか。

長谷川様 当社、貝印株式会社は、創業100年以上の歴史を持つ総合刃物メーカーです。カミソリ・包丁・業務用刃物・医療用刃物など1万点以上の多様な製品を展開し、国内外に多くの製造・販売拠点を有しています。
1977年の米国法人設立をきっかけにグローバル展開を本格化させ、現在ではグループ売上の半分以上を海外が占めています。

今や当社にとってグローバル市場は事業の大きな柱であり、今後も持続的な成長を続けるには、グローバル連結視点での経営判断は必要不可欠です。

―グローバル展開が進む中で、どのような課題が生じていたのでしょうか?

長谷川様 事業の数や製品数が多く複雑な管理を行っていたため、グループ連結視点で品目別に収益構造を見ることができませんでした。これが最大の課題です。KAIグループ全体としての総売上や総利益を把握することはできても、それだけではグループ全体を見通した意思決定とは言えません。

さらに商流という意味でも、複数の製造拠点および販売拠点をまたぎ、グループ内で複雑に絡み合っているのが特徴でもあります。バリューチェーンの工程ごとに有償支給取引を行っているため、販売会社の利益情報を知るだけでは、各拠点での売上や利益まで正確に遡ることができません。
実際に、ある製品の国内拠点での売上は把握できても、海外拠点の売上や利益は不明瞭といったことが生じていました。

この状況を放置していると、個人の勘や経験、現地拠点に偏った視点に基づく「個別最適判断」に頼らざるを得ない状況が続きます。しかし、それでは利益最大化もしくは最適化の観点から機会損失を起こす懸念が高まるでしょう。
そうした事態を回避するためにも、収益構造の可視化に踏み切ったというのが今回の背景にあります。

ゴールを定義し、スモールスタートで成功体験を積み重ねた

―どのような手順で収益構造の可視化に着手したのでしょうか。

長谷川様 当社独自の課題を整理した上で、ファーストステップとして「あるべき姿」の策定に取り組みました。
当社にとってのあるべき姿とは、「事業収益構造の解像度を上げ、”取るべきリスク”を取りながら、グループ全体の”うれしさ”(=成長)を追求する全体最適追求型の経営判断ができること」だと定義しました。言わば、これが本プロジェクトのゴールです。
各部門が必要な粒度でさまざまな情報を把握するとともに、シミュレーション分析できる状態を目指しました。具体的には以下のような実績の情報を収集しました。

  • 販売:製品別の販売単価と販売数量

    原価:製品別のグループ連結原価(変動費と固定費)

    利益:製品別の限界利益・粗利

これらの情報を原価低減活動、地域別販売戦略、ブランド戦略など、経営判断に直結する管理会計情報として使えるレベルまで引き上げることを意識しました。
当初は、社内のデータを集めるとともに、Excelを用いた試算に挑戦しました。しかし、データ収集や整備に関わる工数がかかること、また分析ノウハウの属人化を避けるためには、Excelによる継続運用は現実的ではないという結論に達しました。
これを受けて自社単独ではなく、グループ連結と多様な分析軸に豊富な実績を持つアバントの知見を活用し、経営管理システム「AVANT Cruise」を採用しようという方針が固まったのです。

―社内の合意は、どのように形成していきましたか?

長谷川様 プロジェクト構想段階から「“うれしさ”の言語化とスモールスタート」をコンセプトに、経営陣や関連部門に向けては丁寧に説明しました。
そもそも経営層は「本当に実現できるのか」「可視化したデータを経営判断に活かせるのか」といった実現可能性への懸念を持っていました。そのような疑問に対しては、Excelで試作した数値を報告し、利益を生み出している製品の具体的事例を共有する方法が有効だったと思います。
このプロセスにより、より詳細な数字を把握することが「うれしさ」につながると実感してもらえました。

西村様 社内にある「本当に実現できるのか?」という不安にも向き合う必要があったため、グループ連結視点での意思決定を行う重要性について、繰り返し発信しました。このプロジェクトを推進することで各拠点、各部署にどのようなメリットがもたらされるか、説明と対話を重ねたことで協力ムードが少しずつ醸成されたように感じています。

これらの他にも、日常から地道な努力を繰り返した結果として、グローバル連結経営に舵を切るための土台としてシステムが不可欠という共通理解を形成できました。

―今回、特定の事業に絞ってスタートした理由を教えてください。

長谷川様 少ない投資でも効果が得られ、また実感できるようにするためです。それには、全製品・全事業を対象にするのではなく、スモールスタートで段階的に広げていく作戦がよいだろうと判断しました。あえて商流が複雑なカミソリ事業の中から製品をいくつか選び、プロトタイプとして検証することにし、その結果システム運用の面で問題ないこと、同時にこうした情報から得られる示唆が大きいことが確認でき、本格導入の決断につながりました。

西村様 システムの本番構築時も、まずはカミソリ事業からスタートし、業務フローが安定的に稼働することが確認でき、システム導入の効果が十分に確認できた後に、別カテゴリーの製品へ横展開する方針としました。これにより、リスク分散につながり、負荷の集中を回避して段階的にありたい姿に近づけると考えています。

海外拠点への負担を最小限に、グローバル収益管理の基盤を構築

―本格稼働に向けた準備段階ではありますが、システムの活用により今後どのような変化や効果を期待しますか?

長谷川様 今回の取り組みにより、まずはカミソリ事業における製品別の連結原価・連結収益の算定が可能になります。これによって、海外での製造・販売を含めた商流全体で利益を確認でき、バラバラだった収益情報を単一画面で把握できるようになると見込まれます。国内だけでは赤字に見えていた製品が、実は海外の販売利益によりトータルでは黒字になるといった“構造の歪み”は、実際に起きていることがわかっています。どの製品で、どの程度の歪みが起きているのか明確に把握できるのは、大きなプラス要因となるでしょう。

製品別の原価構造が見えると、数字に基づいた「部門横断型」の議論がしやすくなります。その結果、個別最適から全体最適への意識転換も図れるものと期待しています。
原価を削るべきポイント、販売戦略を強化すべき領域など、意思決定の論点がより明確化すれば、その後のアクションについても評価しやすくなるのは間違いありません。

―海外拠点との連携における影響はいかがでしょうか?

西村様 今回のプロジェクトを通じて、海外拠点との協力体制が強化され、グローバル収益管理のために必要な基盤が構築されつつあります。

前提として、今回の取り組みは大幅な組織変更やシステム運用体制の新設は行わず、現地に極力負担をかけないことを重視しています。海外におけるERPの整備状況は拠点ごとに異なります。そこで拠点別のフォーマットでデータを出力してもらい、Excelを日本側へ送るというシンプルな運用を設計しました。現地でシステム設定や直接入力が生じないため、現地の負担を最小限に抑えることができました。

また、海外拠点と国内拠点では、品番が一致していないという課題もありました。これについては、グローバル統一コードを新たに作るのではなく、拠点間の変換表を作り、既存コードを生かした運用としました。初期整備は必要なものの、以降の月次では数件の更新作業で済む想定であり、極めて現実的な仕組みとしました。コミュニケーションという面でも、国内の担当者が現地拠点に赴き、やりとりをスムーズにするなど、部門跨ぎの連携が強化できたのも副次的な収穫だったと言えます。

実績管理からシミュレーションへ、戦略的な経営判断を強化

―今回の基盤を、今後どのように発展させていく予定でしょうか?

長谷川様 カミソリ事業で先行して確立した仕組みを、今後は包丁・ハサミなど他事業へも順次展開していきたいと考えています。各カテゴリーで同じ指標・粒度で収益を把握できるようになれば、全社的なポートフォリオ管理も可能になるはずです。

西村様 原価改善に加え、製品価格の設計やブランドポジションに応じた投資など、全体的な販売戦略においても、シミュレーションに基づいた経営判断ができるようになると期待しています。単なる実績管理を行うのに留まらず、多面的な試算を繰り返し、中長期の事業戦略や資源配分の精度向上につなげていきたいと考えています。

※取材年月 2025年11月
※文中に記載されている情報は、いずれも取材時点のものです

会社名:貝印株式会社(KAI CORPORATION)
創業:1908(明治41)年 6月 設立:1954(昭和29)年11月
本社所在地:〒101-8586 東京都千代田区岩本町3-9-5
資本金:4億5,000万円
従業員数:409人
売上高:281億円(2025年3月期)

会社名:カイ インダストリーズ株式会社(KAI INDUSTRIES CO., LTD.)
創業:1908(明治41)年 6月 設立:1951(昭和26)年 5月
本社所在地:〒501-3992 岐阜県関市小屋名1110
資本金:8,804万円
従業員数:776人
売上高:187億円(2025年3月期)

事業内容:カミソリやツメキリなどの身だしなみを整えるツールやビューティーツール、包丁をはじめとする調理器具や製菓用品、医療用刃物など、生活に密着した刃物を中心に1万アイテムにもおよぶ商品を展開。商品の企画、開発から生産、販売、物流までの一連を行っているグローバル刃物メーカー
URL:https://www.kai-group.com/global/

※2025年11月 取材当時の情報です

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