KPIツリーが経営の「戦略や施策」から現場の「成果・効果」までをつなぐ 「Board」による経営・事業管理システムの構築
西松建設株式会社
西松建設株式会社は、1874年の創業以来、土木・建築を中心に社会インフラの整備を担い続けてきた総合建設会社です。長い歴史と伝統によって培われた高度な技術力を強みに、道路やダム等公共施設の建設や都市再開発など、安全・安心な社会基盤整備や快適な環境づくりに広く貢献してきました。
グループ経営の高度化を進める中、業績データはExcelによる属人的な管理に依存しており、経営判断に必要な情報のタイムリーな集約が困難という課題が顕在化していました。
そこで経営のデータドリブン化を実現するため、業績管理ソリューション「Board」を採用し、まずは予算・業績の集計管理システムの構築に着手。加えて、建築事業における受注戦略の可視化・シミュレーション機能の整備も並行して進められています。
プロジェクト推進の工夫やシステム導入による変化、今後の展望についてお話をお聞きしました。
西松建設株式会社
経営戦略室 部長 増田 友徳 様
※所属・役職は取材当時のものです
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導入前の課題
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Excelによるバケツリレーで業績データが管理され、集計・確認の負担大
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ダブルチェックが求められることで、担当者の業務負荷が高まっていた
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集計のリードタイムが長く、経営会議で参照できるデータが古いものにとどまっていた
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担当者交代のたびに複雑なExcelを引き継ぐ必要があり、その都度工数がかかっていた
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導入効果
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予算・業績データの自動集計により、確認・転記作業を大幅に削減
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信頼性の高いデータを共有画面で参照しながら部門間の議論が可能に
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蓄積データに基づく予測機能により、見込み数値の精度向上を期待
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ROICや非財務指標も含むKPIツリーの全社展開に向けた道筋がついた
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データドリブン経営を目指したDX推進の原点
―まずは事業概要と、ご自身のご経歴を教えていただけますか。
増田様 当社は1874年創業の総合建設会社で、土木・建築を中心に、開発事業や不動産事業なども展開してきました。
私は1998年の入社後、建築現場での施工管理を7年、支社での購買・経理・PFI事業のSPC運営管理を8年経験した後、本社の経営企画部に移りました。
経営企画部で中期経営計画の策定やIRを担当する中では、様々な経営分析が必要となります。しかし社内を見渡すと、分析に使えるデータが整っておらず、分析のための素材がないという状況でした。業績の集計はExcelで行っており、数字は一人の担当者のみが把握している状態です。正確性を保つためにダブルチェック、時にはトリプルチェックを行うわけですが、それだけで相当な工数がかかっていました。
―そうした問題意識がDX戦略の根底にあるのですね。
増田様 西松DXビジョンは「現場力がシンカしたスマート現場」「仮想と現実が融合した一人ひとりが活躍できるワークスタイル」「エコシステムで新しいサービスや空間を創り出すビジネス」という三つのテーマを柱とし、2030年を見据えたデジタル変革の全体像を描いています。今回のプロジェクトは「業務DX」に位置づけられ、「データドリブンにプランとプロセスをマネジメントし、事業運営の効率化・高度化に繋げていく」という指針を掲げています。
以前から当時の経営者や経営企画部門とは、データドリブンに判断できる環境を作りたい、ボトルネックの所在を数字で示せるようにと、議論を重ねていました。データがないなら、データを収集できる仕組みから作る必要があります。そこでICT戦略の立案が必要だと上申して、ICT戦略課の設立を提言したところ、自ら携わることとなったのです。ICT戦略の立案、データ活用基盤の構築、そしてDX戦略室の設立へと、そこから約10年にわたって、社内のデータ基盤を一から耕し続けてきました。
KPIツリーで個人の行動から全社ROICまでを1つにつなぐ構想
―取り組みの全体像、最終的なゴールはどのように設計されましたか。
増田様 理想的なあるべき姿は、ROICや営業利益率といった全社の財務KPIから、各事業部の戦略KPIに加えて、現場の社員一人ひとりの行動KPIまでが1本の線でつながれた「KPIツリー」を描くことです。そのためには、KPIツリーを構成する数値を誰もが正確に確認できるようにしなくてはなりません。
ある事業本部のKPIを売上目標の達成とした際に、構成するスタッフが具体的にどのような活動をするかといった行動KPIを定めます。この行動KPIが実際に事業部門のKPIに効いているか、データで検証したいのです。人事評価の一環で各自が行動目標を立てていますが、それが全社の業績にどうつながっているかまでは検証できていません。極論すれば全員が行動目標を達成しても、業績が下がる事態も起こりえます。KPI設定の妥当性や適切さを、データで客観視できる状態を作ることがゴールです。
―システム構築・導入の全体像について解説をお願いします。
増田様 経営管理システムは4段階で構成しています。まず第1段階として財務KPIの基となる予実績管理、続く第2段階でROICやPBRを含む財務指標管理を実現し、第3段階で非財務指標管理、そして第4段階で各部門の戦略・行動KPIを紐づけていきます。今回のBoardで構築したのは第1段階に当たります。
どこから手をつけるかという問いに対しては、まず既存の経営指標が見えるようにすることが先決だと判断し、業績管理からスタートしました。
管理会計の実務経験がシステム設計への翻訳を支えた
―Board製品およびアバントをパートナーに選定した理由を教えてください。
増田様 Boardを選んだ理由は大きく3点あります。まず経営陣が直感的に状況を把握できるダッシュボード機能の充実です。2つ目は、開発の柔軟性が見込めること。そして、ガートナーによる評価の高さです。国内におけるBoardの導入実績は多くなかったものの、海外での豊富な実績から信頼できると判断しました。
また、当社の業績管理は管理会計であり、会社ごとの独自ルールが深く絡んでいます。業務とシステムの両方を理解した上で、個社の事情を設計に落とし込める実力があるベンダーが必要でした。アバントさんはBoardの構築実績があり、経営管理領域の知見と高い技術力を併せ持っています。そして当社の事情を深く理解してもらえると感じたことから、パートナーとして選定させていただきました。実際にアサインしていただいた担当エンジニアは真摯に当社の業務の理解を深めようと努めてくれました。また、アバントさんは専任の保守チームがあることも安心感に繋がりました。
―構築を進める中で苦労した点はいかがでしたか。
増田様 いくらアバントさんが経験豊富とは言っても、当社独自の業務フローや細かなルールなどが多くあります。そうした業務内容を正確に理解していただくことが最初で最大の難所でした。管理会計には、一般的な財務会計の常識では理解しにくい当社固有の処理が多くあります。Excelのプリントアウトを1枚ずつ見せては数字の流れを解説しました。経営企画としての実務経験が、業務フローをシステム要件へと翻訳するうえで役立ちました。設計判断の多くの場面で、スムーズに話が進んだと感じています。
―社内の各部署との調整はどのように進めましたか。
増田様 業績集計は経営企画部門の担当者が中心で、関わるユーザー数も絞られていたため、合意形成はそれほど難航しませんでした。ただし、一般管理費の予実管理機能は、50〜60名の入力担当者と承認者が関わります。従来、Excel標準フォーマットはあったものの、各部門が自由に加工していたので、システム化によって標準化されることへの抵抗はありました。「部門ごとの個別要求に応えるより、全社の経営情報を統合することが優先事項」という方針を一貫して説明し続けることで、少しずつ理解が得られていきました。
「受注段階から業績予測する」建設事業管理システムも構築
―建設業ならではの管理の難しさについてはどのようにお考えですか。
増田様 建設業の特徴として、受注から完工までのリードタイムの長さが挙げられます。売上高は工事進行基準によって出来高に応じて計上するのですが、受注時に受注した工事の工程表から、翌期や翌々期など数年先の売上高が決まってきます。そのため、中期的な目標達成のためには、受注の段階から将来の業績インパクトを想定しておくことが必要で、そのためには、どの案件を受注したらどのような業績になるのかシミュレーションできる仕組みが必要です。
―並行して構築された建築事業管理システムについてもお聞かせください。
増田様 建築事業本部長から事業管理の仕組みを作りたいとの要請を受け、アバントさんとともに新たなプロジェクトとして立ち上げました。受注戦略の最適化と業績見込み精度向上がねらいです。どの種別の工事をどの割合で受注するか、そして、受注物件の売上計上時期について複数シナリオでシミュレーションできる機能を備えています。
さらに次のフェーズでは、案件へアサインする積算、設計、施工などの人材のリソース管理も行う予定です。これも建設業の特徴ですが、経験の内容が人材の成長に直結するため、経験ポートフォリオと人材育成は切り離せない問題なのです。
データドリブン経営への歩みを着実に進めたい
―まだ道半ばという前提ですが現時点の成果を教えていただけますか。
増田様 まず信頼に足るデータが一元的に揃ったことが最大の成果だと言えます。Excelファイルが散乱している状態では、どれが正しいか、最新なのかも判断できませんでしたが、今は同じ画面を見ながら議論できるようになりました。経営企画と総務で同じ確かなデータを共有できるという変化は、小さくても大きな一歩です。属人化してしまったExcelファイルが一掃されたことで、担当者の引き継ぎ負荷も大幅に下がったと思います。
―今後の展望をお聞かせください。
増田様 蓄積されたデータを活用したBoardの予測機能(B.E.A.M)も実装しているものの、まだ十分には活用できていません。過去10年分のデータから、一般管理費の月別・科目別・部門別の見込み数値を自動予測する仕組みであり、データが積み重なるにつれて精度が上がっていくことが見込まれます。経営陣の間でも人がやるべき業務、AIをはじめ自動化してよい業務の判別が進んできており、社内の風土も着実に育ってきています。
先述したようにKPIツリーの4段階を完成させ、全社員の日々の行動が経営数値への貢献を可視化することが最終的な目標です。データドリブン経営実現まではまだやるべきことは多いですが、着実に進めたいと思います。その実現に向けて、アバントさんには業務改善の提案も含めたパートナーとして期待しています。
※取材年月 2026年3月
※文中に記載されている情報は、いずれも取材時点のものです
西松建設株式会社(NISHIMATSU CONSTRUCTION CO., LTD.)
創業:1874(明治7)年
設立:1937(昭和12)年9月20日
本社所在地:〒105-6407 東京都港区虎ノ門一丁目17番1号 虎ノ門ヒルズビジネスタワー7F
資本金:約235億円
従業員数:3,351人(連結、2025年3月末)
売上高:約3,668億円(連結、2025年3月期)
主な事業:建設事業、開発事業、不動産事業他
URL:https://www.nishimatsu.co.jp/
※2026年3月 取材当時の情報です
