Excelに依存した経営管理をわずか半年で刷新 ~AVANT CruiseによるROIC算出と予実管理の一元化~
旭有機材株式会社
旭有機材株式会社は、管材システム事業と樹脂事業、そして水処理・資源開発事業の3セグメントを軸とする東証プライム上場の中堅素材メーカーです。「グレートニッチトップ企業」を目指す新中期経営計画のもと、ROIC10%・ROE15%(2030年度目標)を掲げ、事業ポートフォリオの最適化と資本効率経営への転換を推進しています。
その実現に向けた取り組みを進める中で、算出業務の運用体制は大きな課題となっていました。これまで事業別ROICはExcelでの運用を続けてきましたが、算出精度の担保や業務の属人化という面で限界を感じていました。こうした状況を打開すべく、経営管理システム「AVANT Cruise」を採用し、キックオフからROIC算出と予算管理を含めて半年で本番運用を開始するスピード導入を実現しました。選定の理由や導入による効果、今後の展望について教えていただきました。
旭有機材株式会社
コーポレート統括本部 経理・財務部長 橘 康弘 様
※所属・役職は取材当時のものです
-
導入前の課題
-
Excelで事業別ROICを算出しており、精度と継続性に不安
-
ROIC算出が属人化し、限られたメンバーへの依存が続いていた
-
ROICツリーは作成していたが、事業部が施策に活用できるレベルではなかった
-
予算策定・予実管理がExcelファイルで分断され、大きな工数負担となっていた
-
予算とROICが連動していないため、事実上、経営管理には応用できなかった
-
-
導入効果
-
ROIC算出・予実管理の自動化と、経営管理基盤の一元化
-
事業別ROIC算出が自動化され、分析に集中できるようになった
-
予算集計・予実管理レポートの自動化が進み、年間約40%の工数削減を見込む
-
予算管理と事業別ROICが同一の経営管理基盤に統合され、データ連携基盤が整った
-
財務会計からROIC経営への転換で浮かび上がった課題
―まず事業概要とご自身の業務内容についてお聞かせください。
橘様 当社は宮崎県延岡市を発祥とする素材メーカーです。旭化成のグループ企業ではありますが、事業上のシナジーはそれほど多くなく、独立した経営を行っています。プライム市場に上場しており、売上高852億円、連結従業員数は2000名弱の中堅企業です。
事業は3つのセグメントに分かれています。半導体製造装置向けを含む樹脂バルブや配管材料を扱う管材システム事業が売上の約6割を占め、建設・自動車・半導体産業向けの樹脂素材や水処理設備やさく井工事等の水処理・資源開発事業なども扱っています。
経理・財務部は、有価証券報告書の作成や連結決算管理といった財務会計全般を担いますが、近年は資本コスト経営の推進という新たなミッションも担っています。私は2021年に経理・財務部長に就任しましたが、ちょうど上場企業の経理財務に求められる役割が大きく変わった時期と重なりました。
―資本コスト経営への対応を求められることになったのですね。
橘様 少なくとも当社の財務部門には、無借金経営を続け、自己資本比率を高く保つことが良しとされる安全性重視の考え方が根付いていました。私も有価証券報告書や法人税申告書作成といった財務会計を長く担っており、延岡工場で管理会計は少々経験しましたが、ROICやWACCといった聞き慣れない言葉が急に存在感を増すとともに、資本コストと株価を意識した経営、企業価値向上を重視する国際的なファイナンス部門への転換が求められるようになったのです。
そこで当社では、2025年中期経営計画においてROE11%・ROIC9%という目標を掲げ、ROICを軸とした経営管理に取り組む方針を固めましたが、いざ進めていくと経営管理上の課題が次々と顕在化していきました。
―具体的にはどのような課題でしょうか。
橘様 課題を整理したところ、以下に説明する6項目に大別できました。1つ目が、ROIC算出の精度です。事業別ROICはExcelで算出していましたが、算出方法を含めて手探り状態で、正確性に不安がありました。2つ目は、ROIC算出の属人化、すなわち限られたメンバーだけが対応できるExcel作業のため、担当者が変われば継続できなくなるリスクを抱えていました。
3つ目は、ROICが事業部で活用できるレベルにまで達していなかったことです。ROICツリーは作成しても、Excelでは事業部が施策改善に使えるレベルのデータを網羅できません。経営改善のツールとして不十分だったわけです。
4つ目は、予算との連動です。「来期はROICをどう改善するか」という目標設定や施策の検討に使うには、予算策定のプロセス自体にROICを組み込む必要があります。しかし、ROICと予算は別で管理されており、連動するための仕組みが整っていませんでした。
さらに予算策定から予実管理まで複数のExcelが乱立し、業務が複雑化・属人化した結果、年間を通じて大きな工数負担が生じている予算業務の複雑化も課題として挙げられます。
そして最後に、日常の業務で手一杯になり、こうした状況の改善を検討する時間が取れず、根本的な見直しに着手できない悪循環が続いていました。
これらの原因の根本には、細分化された事業別B/Sなどを支えるデータインフラが不足していることがあると考えました。事業別の資本効率を深掘りし、議論できる経営管理を実現するにはこのデータ基盤の整備が不可欠でした。
AVANT Cruiseを選んだ理由
―システム選定にあたって重視した点を解説してください。
橘様 こちらも6つのポイントを定めました。まず開示数値との整合性の確保です。財務会計を長く担ってきた立場として、数値の信頼性は譲れません。事業別に分解した数値と開示数値との整合性こそ、管理会計の正確性を担保すると考えました。
次に、経営層だけでなく現場でも活用できる仕組みです。現場がROICを「自分事化」するには、部署レベルまでデータを分解して深掘りできることが不可欠です。3つ目に、トライアンドエラーを前提に、まず使える状態を優先することです。使って初めて見える課題が必ずあるので、まずは不完全でも早期に運用を開始したいと考えました。AVANT Cruiseではテンプレートを活用し、他社の成功事例を真似られる点も魅力的だと感じました。
4つ目は拡張性です。事業は常に変化しますから、集計範囲や計算ロジックをピボット操作のように柔軟に変更できることが重要でした。5つ目は実績管理だけでなく予測・シミュレーションへの対応で、予算情報も同一システムに取り込み、予算ベースと実績のROICを比較できる環境にこだわりました。最後の6つ目はシステム化によって工数が削減できるかです。作業負荷を減らし、分析や施策立案といった付加価値業務にリソースをシフトすることが狙いです。
―その上でAVANT Cruiseを選ばれた決め手は何でしたか。
橘様 最大の理由は、豊富な経営管理コンテンツです。事業別ROICがベストプラクティスとして実装されており、既存コンテンツを活用しやすかったためです。要件を定義して1から開発する従来型のシステム開発では、時間が大幅にかかってしまいます。他社の成功事例に詳しい、経験豊富なコンサルタントもいるので、予実管理と事業別ROICのあるべき姿とのギャップを洗い出し、解消方法を導いてくれるだろうと期待できました。
当社では2021年に連結会計システムDivaSystem LCAを導入しており、アバントさんに導入や運用の支援をしてもらった経緯があります。その背景から、当社の連結決算データを熟知されており、かつ同じアバントグループの製品で、連携も容易だとお聞きした点もプラスでした。それに付随して、初期コストがほぼ不要なレベルでスタートできるため、心理的にも取り組みやすくなりました。多額のシステム投資が不要なら、万一頓挫したとしてもダメージは最小限で済むはずです。テンプレートが整備されている点も魅力的だったのは間違いありません。
私たちは最短での導入完了を望んでいたので、まずはそれが叶いそうなこと、そして導入後もコンサルタントが改善のために伴走し続けてくれる点が最終的な決め手となりました。
約半年で導入、稼働を実現できた
―プロジェクトがどのように進んだのか教えてください。
橘様 2025年5月にキックオフを行い、ROICの受入検証を経て、10月にはROIC算出システムの本番運用を開始しました。そして12月には予算管理システムを稼働させました。ROIC部分は決算対応による非稼働期間を除くと実質3ヶ月での導入です。ゴールは「Excelで作っていたROICと予算の仕組みをAVANT Cruise上で再現する」ことに絞りました。まずは、確実に動く状態をつくることに集中しました。
当社は5月に年次決算、7月は1Q決算、10月は2Q決算があります。そして12月から3月は予算策定で、1月には3Q決算があります。このように一年中何かしらの決算・予算業務が走っているため、この中で無理なく導入を進めるため、ROICと予算を分けて段階的に稼働させる方針としました。
―多忙な決算・予算業務と並行しての導入でしたが、現場への負荷はいかがでしたか?
橘様 予想外に負荷が少なかったというのが本音です。当社側のメインタスクは6月のヒアリングシートへの回答と、Excelデータの提供のみでした。連結会計システムの数字やデータはアバントのコンサルタントが自ら解析し、AVANT Cruise上に再現する作業のほとんどを担ってくれました。私たちはレポートを確認し数字の正確性を検証するプロセスに集中すればよく、非常に助かりました。上長への報告も含め、社内への影響がほとんどないという点は、限られた人員で継続的な業務を抱える中堅企業における改革推進にとって、見逃せないポイントだと思います。
―実質3ヶ月での稼働、なぜそれほどスムーズに実現できたのですか。
橘様 まずDivaSystem LCAを通じ、アバントさんが当社の連結決算データの構造を把握していたことです。説明する手間が大幅に省けただけでなく、当社のデータをそのままAVANT Cruiseに展開できたことが、開発スピードの向上に直結しました。また、「はじめから100点満点は求めない。70点でよいから稼働を優先」という方針をコンサルタントと共有できていたことの効果も大きかったと思います。完成形を追求してプロジェクトを長期化させることを避けました。まず使い始め、現場の声を反映しながら育てていくという方針を双方が共有できていたからこそ、短期稼働が実現できたと感じています。
アバントさんのコンサルタントの方には、ROICの分子のあるべき対象や投下資本の運用サイドと調達サイドのギャップの調整といった、経営管理にまつわる本質的な問いを一緒に考えてもらえたことが心強かったです。システム設定を決めるだけでなく、経営管理の姿そのものを議論するパートナーとして機能してくれたことが特に印象深かったです。
自動化がもたらした変化
―稼働後、どのような変化が生まれていますか。
橘様 ROIC算出に費やしていた時間と頭のリソースが、分析作業に使えるようになりました。これまでと異なり、AVANT Cruise上でROICツリーが自動でレポーティングされることで数字の意味を深掘りする余裕ができ、議論に集中できるようになっています。
特にウォーターフォールチャートは重宝しています。ROICが前期比でどう変化したか、分子側(営業利益)と分母側(投下資本)のどちらに要因があるか、さらに具体的には売上債権・棚卸資産・固定資産のどこが影響しているかを、一目で把握できます。
―工数削減の手応えはいかがですか。
橘様 年間で約40%の工数削減効果が見込まれています。現時点ではExcelとAVANT Cruiseの並行運用が続いているため、削減効果が出始めるのはこれからですが、来年度早々にExcel作業を廃止できる見通しです。以前は予実管理とROIC管理が分断されていました。SAP・子会社各社のデータをそれぞれ別のExcelで集め、予算策定・予実分析・ROICレポートと、別々の作業フローが並走していました。しかし現在は、年初予算・下期修正予算・上期見込・実績など、さまざまなタイミングのデータが同一基盤の上で管理できるようになりました。
―予算管理とROICが同一の基盤に実装された点はいかがでしょうか。
橘様 今回の取り組みで最も本質的な変化だと思っています。これまでは予算とROICが切り離されているため、予算ベースのROICを即答できませんでした。今回、データがつながったことで、計画時点と実績のROICを比較することでPDCAが回せるような基盤が整いました。
これまでROICは結果を事後的に確認する指標に過ぎませんでしたが、これで経営意思決定のための予測ツールとして活用できる道筋がつきました。
この道筋を確実にするためにも、まずは予算ROICの策定運用を本格化させるために実際の経営サイクルへ早期に組み込みます。そしてSAPのデータをAVANT Cruiseに取り込み、事業部がROICを改善するためのツールとして活用できる状態に発展させることが次のステップです。
現在のROICツリーは、連結・セグメント・子会社レベルまでの分解はできています。さらにSAPの販売・生産・在庫データを連携させれば、製品グループや原価センタ、販売数量管理といった業務KPIレベルへの細分化が実現します。そうなれば現場で「自分の仕事がROICにどう影響するか」を実感できるようになるでしょう。経営から現場まで同じROICの言語で話せる組織をつくることが、この取り組みのゴールです。
―同様の課題を抱える企業へメッセージをお願いします。
橘様 人的資源も資金も限られていても上場企業としてROIC経営の実現を求められる当社のような企業は多いでしょう。自社にノウハウがなくても他社のベストプラクティスから始められること、初期投資を抑えられること、現場負担を最小化しながら短期で動かせることは、判断の大きな根拠になるはずです。未完成でもまず動かす割り切りで、半年での実装と稼働が実現できました。完璧を求めてスタートを遅らせるより、動かしながら改善していく方が、結果として速く、深くたどり着けると実感しています。
※取材年月 2026年6月
※文中に記載されている情報は、いずれも取材時点のものです
旭有機材株式会社
設立:1945年3月12日
東京本社:東京都台東区上野3丁目24番6号 上野フロンティアタワー21階
延岡本社:宮崎県延岡市中の瀬町2丁目5955番地
資本金:50億10万円
従業員数:1,787名 (2025年3月末現在・連結)
売上高:851億62百万円 (2025年3月期連結)
主な事業:管材システム事業、樹脂事業、水処理・資源開発事業
URL:https://www.asahi-yukizai.co.jp/
※2026年3月 取材当時の情報です
経営管理において必要な財務・非財務情報を収集・統合し、多軸分析を行えるクラウドサービスです。1,200社超の支援実績から生み出された経営管理機能を持ち、データを収集する入力画面や、 90 種類の経営会議レポート・分析帳票などを標準搭載。設定のみで利用できます。
